欧米心霊行脚録

付 録

世界神霊大会の概況

一、幹部と各国の代表

 日本国の神霊論者を代表し、遙るばる極東から英京まで出張した私としては、取り敢えず右の大会の概況を、本邦の会員読者諸子に報告することが、第一の義務と存じます。無論、この大会の席上で取扱われた問題は、非常に多端にわたり、又、私一個人として交渉接触を重ねた事件人物も、余ほどの多数にのぼり、目下の私としては、到底その詳細を筆にしてる余裕がありません。大会が済んでからも、私はロンドン並に地方から招待又招待、そして何所へ行っても、日本の心霊事実、並に神道に関する講演を求められ、今尚おほとんど寧日ねいじつとてもない位です。で、大切な事、興味ある問題等は、後から想い出して、ボツボツ書き足すことにして、今回はホンの大会の概要を申述べるにとどめます。

 御承知の通り、『世界神霊大会』は三年毎に開会せられ、今回のロンドン大会は、これで第三回目であります。前回は仏国のパリで開かれ、その際二十四ヶ国の代表が集まり、相当に世界の耳目を聳動しょうどうしたことは、一昨年の『心霊と人生』誌で報告して置きましたが、無論その際には、まだ日本国としてこれに参列すべき機運に向わず、空しく西の空を望んで、歎息したような次第でした。

 今般ロンドンで大会の開催された会場は、サウス・ケンシントンの『クィンズ・ゲート・ホール』と称する建物で、平生は音楽の講堂に使われてる所らしく、地下室から第五階にわたりて、可なりの設備が出来て居ます。附近は至極閑静で、ケンシントシ・ガアデンにも近く、ず神霊論者の大会場として、ほぼ申分なきに近いもので、ただ慾を言ったら、んな大衆を容るるには、少々手狭を感ずるのが、いささか遺憾いかんな位のものでした。

 ず今回の会議の幹部の顔触れからいうと、名誉総裁が例の有名なサー・アーサー・コナン・ドイル。六尺豊かの堂々たる体躯の所有者で、七十に手の届く年齢でありながら覇気旺盛、口をの字に結んで、天の一角を睥睨へいげいする面魂つらだましいは、何所へ持ち出しても、押しも押されもせぬ貫禄を備えてります。主要なる会議の席には、この人が大てい議長席を占めました。

 次に会長は、イギリスのジョルジ・ベリイ氏――この人はドイルさんとは打って代り、英人としてすこぶる短矮な体躯の所有者でしたが、筆を執っても、演説を行っても、誠に立派なもので、しかも事務的に、ドシドシ仕事を進めて行く手腕は、仲々冴えた物でした。七日間の会議で一番頭脳を使ったのは恐らくこの人で、よその見る眼も気の毒な位に、各方面の引張凧に成て居ました。

 それから、同席の下には副会長が二人ってこれを助けましたが、いずれもフランス人でした。一人は仏国精神学会の創立者として有名なジアン・マイヤー氏――きけば、この人は巨大な葡萄園の所有者であるが、先年私財の約大半、四百万フランを投げ出して、一手に仏国精神学会の基礎を築いたという、篤志家だという事です。見るからに長身痩躯の、いかにも気品ある中年の紳士でした。他の一人はアンドレー・リバー氏――この人は語学の天才で英語、仏語、葡語ポルトガル、伊語等を自由自在に使い分け、自分の仏語演説を、早速自分で英語に通訳するなどの離れ業を演じ、いつも会衆をあっと感歎せしめたのでした。世界神霊大会の檜舞台には、是非とも無くてならない立役者のように見受けられました。

 その外幹部補助役としては、英国中のこれはという神霊家が、総掛りでこれに当りました。ず何よりも会衆に好感を与えたのは、例の老ウァレェース博士、今年八十歳の老躯を提げながら、白髪童顔、さかんに演説もやれば、説明もやり、真に壮者を凌ぐの慨がありました。そして立派な学界の元老株でありながら、少しも気取らず、威張らず、各国の代表と膝を交えて歓談する有様は、誠に敬服に値するものがありました。つづいて衆目の中心となったのは、例のハミルトン侯爵夫人、金色燦然たる貴族的服装で、ジミな服装の神霊家の間に異彩を放ちつつあるのでした。この人も、斯道しどうの為めには、よほど資財をなげうちて、保護奨励の努を執る一人だと承ります。その外、ストッバァド夫人、マッケンジィ夫人、ステツド嬢、エリオット嬢、スタンレー・ド・ブラス氏、オーテン氏、キーリング氏、トマス氏、ガウ氏、ボッディングトン氏、ド・クレスピニィ夫人等、とてもここに枚挙にいとまなしであります。主人側につきては、んなところで御免を蒙り、今度は各国から雲集した代表者を紹介する段取ですが、あまりに沢山過ぎて、とても姓名を列挙する訳にはまいりません。左にその所属の国名だけでも挙げることにしましょう。即ち――

 (一)北米合衆国(約三十人)(二)カナダ(三)アルジェンティン(四)ブラジル(五)ゴーテマラ(六)キューバ(七)メキシコ(八)フランス(多数)(九)スペイン(十)ポルトガル(十一)イタリイ(十二)スイス(十三)ドイツ(十四)オランダ(十五)デンマーク(十六)ペルギィ(十七)ルーマニア(十八)アイスランド(十九)印度(二十)南阿(廿一)コスタ・リカ(廿二)濠州(廿三)蘭領東印度(廿四)支那(廿五)プエルト・リカ(廿六)英国(多数)(廿七)日本(二人)

 右の中東洋方面は、印度が四人で、中でもリシス夫妻が、印度式の服装と、皮膚の色で、大いに異彩を放って居ました。蘭領印度は一向目立たず、支那の代表というのも、わざわざ極東から出張した訳ではないらしく、たった一二度申訳に顔を出した婦人があった丈でした。日本はく申す私の外に、福来博士も時々顔を出しました。世界神霊大会に於ける、初めての出席という所を買われたのか、七日間ぶっ通しに、私は各方面の人達から質問連発。常に包囲されてる姿であったのは、随分肩の凝る仕事で、偶には息ヌキの為めに、一時間位ケンシントン・ガアデンまで逃げ出したりしました。が、その為めに、日本の心霊事実ということは、相当世界の研究者間に行きわたったと思います。


第十一信:
ボストンに於ける心霊実験
八、結論

目  次

付録 世界神霊大会の概況 二、発会式当日の講演並に概況


心霊図書館: 連絡先