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三尺坊と才一郎

二十六 せま神前しんぜんに百余人よにん

 八早朝そうちょうからきたので一どう早寝はやねをし、くる九又々またまたれいによりて物語ものがたりはじまりました。

神様かみさま御殺生ごせっしょうをなさる場合ばあいには、大海たいかい真中まんなかがまっかにえるとうけたまわりますが、左様さようでありますか?』

左様さよう海底かいていがあかくなってきますから、わたしどもは自由じゆう水底すいてい這入はい魚類さかなをつかまえます。』

白牛様しろうしさま今度こんどここへおいでになりませんか?』

左様さよう、三ほどまいりました。二と五と、前夜ぜんやとで御座ござります。』

『二と五とは昼間ひるまですか夜分やぶんですか?』

昼間ひるまございます。』

夜前やぜん何所どこへおいでになりました?』

わたしすわってりますところえました。二と五とは御神前ごしんぜんえたのです。』

白牛様しろうしさまばれておいでになられるのですか?』

『そうです。』

なん白牛様しろうしさまへおりなされましたか。』

最初さいしょときにはおさがりをやりました。』

白牛様しろうしさまはおせきしてられますか?』

左様さよう……。』

今度こんどでのさいなん差上さしあげたいとおもいますが……。』

『それは難有ありがたいことですが、なにげんでよろしゅうございます。』

朔日ついたちにおでのときは、御幾方おいくがたござりましたナ?』

左様さよう百二十五にんさまでござりました。』

『ナニ! 百―二十―五にん……何所どこにおいでござりました。あの神前しんぜんせまくはありませなんだか?』

『ナニべつせまいということはありません。……』

 才一郎さいいちろうはただそうっただけで何故なぜせまくないのかふか説明せつめいもしませんでした。かかる場合ばあいには聴者ききてほうでよほどをきかさぬと肝腎かんじんてんをききらすおそれがありちです。

 その暮方くれかたから才一郎さいいちろうは三うら信次郎しんじろうかた出掛でかけて一ぱくうえくる十早朝そうちょう柳田家やなぎだけもどり、れいによりてつど人々ひとびとにいろいろの物語ものがたりをしました。物語ものがたりうちにはのような一せつがありました――。

当家こなたにて神様かみさまにおそなえの御酒おみきはすぐおやまとどきます。そのほかこちらでなさることはんなことでもみなれます。先達せんだってわたしがこちらへまいり少々しょうしょうながくなりますと、三尺坊さんじゃくぼうさま御心配ごしんぱいになり、あまなが俗人ぞくじんにまじわり、しも粗匆そそうことでも出来できとき申訳もうしわけないことになるとお噺合はなしあいになられたそうです……。』

 丁度ちょうどそうはなしてるところへ丹羽にわ七というひとがやってまいり、

『いろいろ有難ありがたことどもの拝謝はいしゃのしるしに不肖ふしょうながら才一郎さいいちろうさまに論語ろんご講釈こうしゃくをしておきかせもうす。』

って早速さっそくそれをこころみましたので、る一とうつつしんでうけたまわり、才一郎さいいちろう大変たいへんよろこんでみみかたむけましたが、論語ろんご講釈こうしゃくんでからは、なにやらむね心地ここちがよくないとって、才一郎さいいちろうは一とうち引籠ひきこもり、それからはひとにも面会めんかいせず、ただひと寂々せきせきとして黙座もくざしたのでした。


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