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三尺坊と才一郎

二十五 雨傘あまがさ不用ふよう

 七引続ひきつづいて人々ひとびと打寄うちよりて才一郎さいいちろうはなしをきいたのでした。

『あなたさま人体じんたいてて神霊しんれいとなられましても君父師くんふし危難きなん場合ばあいには御救おすくくださいますか?』

無論むろんかみとなりてもまもりてります。』

始終しじゅういてておまもりくださいますか。』

『イヤ始終しじゅういてはなくとも、八所やところかみと一しょたすけてあげますゆえ御案ごあんじなさるにはおよびません。』

人体じんたいはなるれば、あなたさまはすぐにかみになられますか?』

左様さよう最早もはやくらいもいただき、ぎょう成就じょうじゅしてりますからただち高位こういかみとなります。』

 もなる問答もんどうはこんなところおわりました。そして同日どうじつうまこくからちち才亮さいりょうたくをおとずれりて柳田家やなぎだけもどりました。

 くる八には才亮さいりょうから町奉行所まちぶぎょうしょてて才一郎さいいちろう帰宅きたくたっしを差出さしだしました。文言ぶんげんとおりです。――

わたくしせがれ同姓どうせい才一郎さいいちろう寄合よりあい御医師ごいし柳田やなぎだ泰治たいじさま寄宿きしゅくにて医術いじゅつ修業しゅうぎょうつかまつらせもうしそうろうところ秋葉山あきばさん神託しんたくによって去年きょねん十二がつ泰治たいじさまたく屋根やねあがそうろうまま行方ゆくえ相知あいしもうさざるだん御達おたっし申上もうしあげおきそうろうところ朔日ついたち九つどき御同人方ごどうにんかた帰宅きたくつかまつり、家出中いえでちゅう神慮しんりょ申儀もうしぎ染々しみじみ物語ものがたりもつかまつらずそうろうえども、一ととお始末しまつ相尋あいたずそうろうところまった神慮しんりょ相見あいみもうしそうろうあやしき御座ござなくそうろう依而よって御達おたっし申上もうしあげそうろう。十一がつ 澤井さわい才亮さいりょう。』

 みぎ届書とどけしょ差出さしだしたかえりに才亮さいりょう柳田家やなぎだけ立寄たちよりました。そしていろいろの物語ものがたりのうちんなことをべました――

じつ昨夜さくや才一郎さいいちろうがこちらへもどときあめしましたので、かさってかぬかともうしましたところ、かさをさしてくのは不自由ふじゆうこまる。おやまうちあめにはかからないが、今晩こんばんはかかるからん。かくかさ不用ふようだとってたずにましたようなわけで……。』

 丁度ちょうどその冬至とうじで、家内中かないじゅうあつまってたので、それをきッかけに又々またまたはなしがはずみました。早速さっそく才一郎さいいちろうむかってたずねました。

昨晩さくばんかさはなしでおかえりとのことであったが、あめにはれませなんだかナ?』

左様さようくらいをおやまにおあずけしてあるので、どうかとぞんじましたが、あめはやはりかかりませなんだ。』

あめといえば、当地方とうちほう当年とうねん雨量うりょうおびただしいことでありましたが……。』

左様さようござりましたか。おやまではあめもうすものはさらぞんじませぬ。』

『あの入鹿いるかいけれたときにはおいでになりましたか?』

左様さよう秋葉様あきばさま熱田様あつたさまみないでになりて本宮山ほんぐうやまうえました。』

『あのときあめりませたんだか?』

左様さよう、あのやまだけはりませんでした。』

いけれぬうちにおいでになりましたか?』

左様さようれぬうちました。』

つつみれぬようにすることはかみちからでできぬものでござるか?』

『それはきます。』

『お一人ひとりとまりますか?』

左様さよう一人ひとりまらぬときはお仲間なかまともめます。』

『それなら何故なぜ神様かみさまがおたすけなさらなかったのですか? 田畑たはた沢山たくさんぶれ人命じんめい夥多あまたそんじ、人間にんげんでさえどくおもいます。それに神様かみさまともあろうものがだまってつつみれるのを高見たかみ見物けんぶつをされるとは何故なぜでしょう?』

何故なぜぞんじませんが、あのときなんとも仰付おおせつけ御座ござりませなんだ。』

死亡しぼうしたものはみな不信心ぶしんじんのもので御座ござりましたか?』

左様さようのこらず不信心ふしんじんのものばかりでした。あのとき実況じっきょう神様方かみさまがた本宮山ほんぐうさんより御覧ごらんじておいでになりました。』


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