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三尺坊と才一郎

二十四 神界しんかい神界しんかいおきて

 六あさからまたいろいろの物語ものがたりはじまりました。

医術いじゅつはおやまでおまなびになられましたか。』

左様さようまなびましたが、これはえません。医事いじかんすること泰治たいじかた稽古けいこいたせとのおうせで御座ござります。万事ばんじ御教授ごきょうじゅねがいます。』

今般こんぱん政府おかみでは神社内じんじゃない仏堂ぶつどうをお撒廃はらいになり、熱田あつた神社内じんじゃない大薬師堂だいやくしどうなども取壊とりこわされましたが、これはよろしいので御座ござりましょうか?』

左様さようずはしきこと御座ござります。が、何事なにごとみな天子てんしよりお仰出おおせいだされたことでありますから、かみほうではおかまえにはなりません。』

仏法ぶつほうほろぼしますか。』

『イヤ仏法ぶつほうだとてけっしてしきことはありません。神様方かみさまがた矢張やは仏法ぶつほうをおもちいで御座ござります。まだまだ仏法ぶつほうほろぼして仕舞しまうことはありません。』

大神宮様だいじんぐうさまへは神々かみがみさま御出おいでになりますか。』

左様さよう神様かみさまみな大神宮様だいじんぐうさまへは御出おいでになります。』

大神宮様だいじんぐうさまには坊主ぼうずはおきらいで御座ござりますか?』

『イヤイヤけっしておきらいでは御座ござりませぬ。規則きそく凡俗ぼんぞくてたもので、勝手かって大権現だいごんげんだの、大明神だいみょうじんだの、大菩薩だいぼさつだのと名付なづけますが、凡俗ぼんぞくすことはすこしもおかまえなく、すべて神々かみがみのおくらい大神宮様だいじんぐうさまからされるのであります。わたしもおくらい頂戴ちょうだいしてりますから神様方かみさまがたにおにかかられますが、大神宮様だいじんぐうさまばかりは凡体ぼんたいはなれぬうちはお目見めみえがきませんで口惜くやしいことでござります。』

秋葉様あきばさま御眷族ごけんぞくさま追々おいおいえてまいりますか?』

左様さようえます。今度こんどわたしよりきにつかえたおかた凡体ぼんたいをおはなれになりましたゆえわたしかみになれました。』

御眷族ごけんぞくすうおおいことで御座ござりますか?』

大概たいがい六十ねんまたは百ねんへだててもちうべきものはお引連ひきつれになり、それを御眷族ごけんぞくあそばされますゆえなかなかおびただしいすう御座ござります。』

 才一郎さいいちろうはそのわずかたりに神界の秘事ひじをちょいちょいもらしました。――

駿河するが清見寺せいけんじ、あれはいおてら御座ござりますナ。庭先にわさきからたきちてます。芙山様ふざんさまはあすこにおでなされたでござりましょう。安芸あき宮島みやじま、これもよいところ鹿しかさる沢山たくさんります。名古屋なごやのおしろのおはなしもじつもうござりますが、皆様みなさま御存ごぞんじのないことゆえ駄目だめござります。わたくし大納言様だいなごんさまのお枕元まくらもとなどをツイ往来おうらいいたしましたが、すこしも御存知ごぞんじはありますまい。御存知ごぞんじなきことをおはなししたとて無用むようござります。大納言様だいなごんさま京都きょうとではおあぶないことがありました。左様さよう、二じょうのおしろなどが一ばんにおあぶないときでした。そのほかにもいろいろ御座ござりますが、お目見めみえのせつ直接じか申上もうしあげることにいたします。さもないとひとがかれこれとツマラヌ風評うわさてますから、先々まずまずしてきましょう。千賀ちがろう殿どの、あのおかたわたくしかえりますまえ江戸えどかれるのを見受みうけました。何故なぜかえりがおそござりまするかしらん。あのかたかえられると陣中じんちゅうはなしをして面白おもしろいことでござりましょうに……。』


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