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三尺坊と才一郎

二十一 異国船いこくぶねやら月宮げっきゅうやら

『どなたさまも』と座客ざきゃく質問しつもんはそれからそれへと容易よういきません。『たまになったりなにかして、ひとほうまたひとくこともきますか?』

『そりャどんなことでもいたしますが、三尺坊さんじゃくぼうさまからおゆるしがないとき何事なにごと駄目だめです……。』

何時いつ今度こんど大納言様だいなごんさまにお見参めみえでもなさる場合ばあいがあれば、そのときはしッかり神通力じんつうりきあらわして殿様とのさま御覧ごらんれるがよろしいでしょう。人間にんげんというものはうたがぶかいもので、そうでもしてせぬことには、野狐のぎつねばかされて何所どこかえれてかれたぐらいにしかかんがえません。是非ぜひ一つあなたのせい一ぱいのお手並てなみせていただきたいもので……。』

『イヤわたくしの一了簡りょうけんばかりでもねます。今晩こんばんはおやまからお仲間なかまさまがおでになりますから一つうかがってましょう。』

『それもそうでございますナ――ときにあなたさま日本国にほんこくばかりでなく外国がいこくへもおいでになりましたか?』

左様さようきました。』

外国がいこくにもかみというものはあるものですか?』

りますとも……。』

御面会ごめんかいになりましたか?』

『イヤ面会めんかいいたしませぬ。しかし外国がいこくにも高山こうざんがあり、それへみんなきます。』

幾日間いくにちかんぐらい往来おうらいできるのです?』

左様さよう夕方ゆうがたから出掛でかけてってむこうのやまのぼり、そしてそのうちかえります。』

『その途中とちゅう異国いこくふね御覧ごらんになりましたか?』

『ちょいちょいました。』

『それをくつがえすことがきますか。』

きますとも……。』

ほばしらでもヘシるのですか?』

『いいえ、あれをくつがえすにはほか急所きゅうしょがありますので……。』

『イヤ異人いじんというものは悪者わるものですナ、平気へいきいぬうしにくべる……。』

異人いじんだとておな人間にんげんです』と才一郎さいいちろう見解けんかい質問者しつもんしゃよりもはるか寛大かんだいでした。

けっしてものというべきものではありません。肉類にくるいくに食物しょくもつなのですからいたかたがありませぬ。』

肉類にくるい日本人にほんじんべるのはうでしょうナ?』

べつるいことはありませぬ。神様かみさまはただ正直しょうじきものをおこのみになるだけで、異人いじんだから無闇むやみにいじめるとか、肉類にくるいべるから矢鱈やたらばちあたえるとかいうことはありません。』

しも天子様てんしさまからおたのみになれば、異国船いこくせん打払うちはらっていただけるでしょうか?』

 当時とうじ人心じんしんにはよくよく異国船いこくせんおそろしさがしみんでたとえます。しかし才一郎さいいちろうはそれにも落付おちついてこたえました。

『それは無論むろんきますが、しかし何等なんらがいいたさぬものを打払うちはら必要ひつようはない。がいあたえるときはじめて打払うちはらいます……。』

神様かみさまひとまたはおきになることは実際じっさいあるものですか?』

『あります……。が、わざとげたりいたりするものではありませぬ。悪人あくにん不浄ふじょうのものでおやままいるようなことは滅多めったにありませぬが、もしそんなことがあれば神様かみさまげつくる真似まねをなされます。そうするとそのひとただちにげつけられます。そしてただちに懺悔ざんげして登山とざんしたり、またおそれてかえったり、それはひとによりていろいろです。裂殺さきころすなどということはずはめッたに御座ござりませんナ。』

むかし蒙古もうこらん神風かみかぜいたとうけたまわりますが、これは実際じっさいできるのですか?』

『そりャできます。わたし当春とうしゅんかえった時分じぶんには、丁度ちょうどそのほうまなんで最中さいちゅうでした……。かぜかみみずかみなどのおくらいはいろいろ御座ござります。わたしよりひくいのがあるので自由じゆう使つかうことができます……。』

御嶽おんたけくらいはどうです?』

ひくござります。時々ときどきまいりますが、御嶽おんたけゆるした! これへ! ともうさねばそばまいることはありませぬ。そうじて空中くうちゅうにはみちがあって、いろいろの神々かみがみにおにかかります……。』

地球ちきゅうまわるものだともうしますが事実じじつですか?』

左様さよう、十五ほどそらのぼりてとどまってりますと、種々しゅじゅくにまわってるのがえます。三尺坊さんじゃくぼうさま月宮げっきゅうへも折々おりおりいでになります。また日輪にちりんへも一ねんに一づつおいでになります。これは凡体ぼんたいがあってはかれません……。』


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