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三尺坊と才一郎

十六 白牛しろうしとおふだ

 才一郎さいいちろう物語ものがたりは白牛しろうし風評うわさからはじまりました。

わたくしもそののち追々おいおい修行しゅぎょうつみみ、くらいあがり、只今ただいまでは一とう白牛しろうし頂戴ちょうだいいたしてります。外出がいしゅつおりはこれにって飛行ひこういたすのですから一こう草臥くたびれるということをりません……。』

『それでは』と泰治たいじ感心かんしんして『今晩こんばんここ御出おいでになるのにも矢張やはりそれにしておいでなので?』

左様さようござります。規則きそくからもうしますと、すべて使つかいものをいただけば、凡家ぼんけへはおさがりにならぬことになってるのですが、格別かくべつ思召おぼしめしで、わたくしども仲間なかまにんだけにおゆるしくだされました。この白牛しろうしもうすのはまことまことうつくしいうしござりまして自由じゆう言語げんご使つかい、また力量りきりょう神変しんぺん自在じざいのものでござります。』

 泰治たいじはいよいよ感心かんしんして、

『シテみぎ白牛しろうしさま只今ただいま何所どこつないであります?』

うらります。三尺坊さんじゃくぼうさま出雲いずもよりおかえりの様子ようすわか次第しだいすぐらせるよう申付もうしつけてありますが、今以いまもっなんとも合図あいずがないのはうしたのでありましょうか……。わたしちょっとうらいっ様子ようすまいります。』

 いすてて才一郎さいいちろうせきはずしましたが、すぐに座敷ざしきかえし、

『イヤ白牛しろうしはおかえりのおそいのに退屈たいくつしてりましたから、出雲いずもまで状況じょうきょう視察しさつにつかわしました。三十里位りぐらい御出掛おでかけになられたのを見届みとどけたとき報告ほうこくするよう申付もうしつけてありますから安心あんしんです。』

みぎ白牛しろうし御名おんななんもうします?』

『それはもうげるわけにはまいりません。わたし御山おやまにて頂戴ちょうだいしてりますが、これも矢張やはり……。』

『ではみぎうしたん白牛しろうしさまもうせばよろしいでしょうか。』

『それでよろしうござります。』

『あなたのことなん御呼およびしましょうかナ?』

『それは先生せんせいのお心任こころまかせにをつけてべばよいとのおうせにござります。』

成程なるほど……。ではそういたしましょう。』 (註。柳田家ではその後才一郎の尊称を琢堂様と称えて居ります。)

 白牛しろうし風評うわさほかにはおふだはなしました。

わたし今晩こんばんあらためて八まいのおふだ頂戴ちょうだいしました』と才一郎さいいちろうもうしました。『この八まいふだで八ヶしょ御路おみちがつきます。難有ありがたいとおもって御信心ごしんじんなさればみぎの八ヶしょこと明日みょうにち申上もうしあげることにいたしましょう………。』

『その御札おふだおもいつきましたが』と泰治たいじたずねました。『昨年さくねん日本国にほんこくじゅう数多あまた御札おふだりましたのはあれは、一たいいかなるわけござります?。』

『あれは大方おおかたきつね所行しょぎょうであります。もっとなかには神様かみさまがおらしの御札おふだもあります。咋年さくねんというとし至極しごく凶年きょうねんであります。で、諸々しょしょ方々ほうぼう神様かみさまがた御申合おんもうしあわせのうえふだらしてくださいましたので、しもあの御札おふだらなかったなら、五こく不作ふさくにて天下てんか人民じんみん餓死がしするもの大半たいはんたっするはずであったとうけたまわります。かくこれくらいところまで五こくみのったのはみぎ御札おふだ人民じんみん信心しんじんおこした所為せいだともうします……。』


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