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三尺坊と才一郎

十四 一もんとう

 その卓齋たくさい才亮さいりょう太郎たろう泰治たいじとうむかって才一郎さいいちろう物語ものがたったところはすこぶ多方面たほうめんわたり、研究者けんきゅうしゃりて余程よほど参考さんこう価値かちあるものも存在そんざいしました。

 卓齋たくさいへの物語ものがたりは

皆々みなみなしん祈念きねんいたさるれば我方わがほうにてまもります。此頃このごろ大阪おおさかおもてにて村瀬むらせ治右衛門じえもん見受みうけました。まもりてはれど方今ほうこんごと物騒ぶっそう時節じせつにはあま他所よそへはぬがよろしい……。』

 ちち才亮さいりょうむかっては、

今晩こんばんまいりたるはべつでも御座ござりませぬ。三尺坊さんじゃくぼうさまから剃髪ていはつことたのみてまいれとおうせられたのでございますが、いかがいたせばよろしいのでしょうか。』

というといでした。で、才亮さいりょう剃髪ていはつするもせぬも神様かみさま思召おぼしめし次第しだいであるが、それにしてもこれまで髪月代さかやきうしてたかとこころみにたずねてますと、

『このかみ先達せんだってやままいったときままで、一なおしませぬが、不思議ふしぎことには一筋ひとすじりません。』

という意外いがい返答へんじでした。

 泰治たいじは、

三尺坊さんじゃくぼうさまその皆様みなさまらせられそうろうところ如何いかなるところござるか?』

たずねますと、才一郎さいいちろうこたえ

『おやまには善美ぜんびつくしたる広大こうだい結構けっこうなる御殿ごてんありて、平生へいぜいそれにらせられます。また空中くうちゅうにもだいなる御殿ごてんありて此処ここにもおおくの御方々おかたがたらせられます。』

左様さよう御殿ごてん秋葉様あきばさまばかりでござるか。』

ほか神々様かみがみさま御殿ごてん御宮等おみやとう空中くうちゅう御座ござります。其所そこあめもなくゆきもなく、あつさもなくさむさもなく、まこと結構けっこうところ御座ござりまする………。』

 太郎馬たろうまへの物語ものがたりはなかなかくわしいもので、二人ふたりあいだにこまかい問答もんどうかえされました。

わたし大日本国だいにほんこくもうすにおよばず、外国がいこく山々やまやま島々しまじままでものこりなく一らんいたしました。大阪おおさかおもてにて去冬きょとうより今年こんねん早々そうそうまでの騒動そうどうはなかなかたいしたもので、大納言だいなごんさま尾張おわり藩主はんしゅ御危急ごききゅうせつ眷族けんぞくのお仲間なかまさまともにおたす申上もうしあげました。大阪おおさか落城らくじょうとき皆様みなさまと一しょはたらき、角櫓かくやぐら沢山たくさんめてある烟硝えんしょうしも大砲たいほうたまがそれにあたりますとおびただしく人命じんめいそんじますので、皆様みなさまともうつしましたので、さいわ死人しにんすうはさまでおおくもありませなんだ。そのせつ薩摩さつまじんより大砲たいほう打出うちだ最初さいしょたまはらけましたなれど、あとの一がん落城らくじょういたしました。時刻じこくたつ上刻じょうこくござったが、このおもてへは何時いつごろひびきましたか?』

『五ツぎのころかとおぼえてります。』

太郎馬たろうまこたえますと、

『フム左様そうござったか――あのせつ盗賊とうぞくどもが沢山たくさん分捕ぶんどりにましたが、悪人あくにんかみのおまもりなきゆえひとりでにたまあたりてぬるものがおおいようでした……。』

神様かみさま戦場せんじょう御出張ごしゅっちょうあそばされますか?』

『そりャ天照あまてらす大神おおかみはじたてまつり、日本国にほんこくじゅう諸神しょしん御出張ごしゅちょうられまする。』

軍中ぐんちゅうには秋葉山あきばさん信心しんじんするものも御座ござりましたか?』

『それはありましょう。一たい神様かみさま信心しんじん信心しんじんかかわらず、人命じんめいすくってくださるのが職分しょくぶんであらせられますから、戦争せんそうとなると空中くうちゅうくらくなるくらいにおあつまり、おたすあそばされます。』

 卓齋たくさいとのあいだにも子供こどもらしい問答もんどうがありました。

そらあおく、みずのようにえますが、一たいあれは如何いかがなるものです?』

左様さようそら何所どこまでのぼってても、あわくもがあるのみでべつあおいことはありません。大地だいちからとおへだたるのであおゆるまでです。』

『あなたは自由じゆうそらぶのですか?』

近頃ちかごろまでは眷族けんぞくさまれてもらい、ぶというよりはあるほうでしたが、追々おいおい修行しゅぎょう成就じょうじゅし、いまでは自由じゆう自在じざい飛行ひかうきます。ただ今晩こんばん御同道ごどうどうまいりました。』

 ちち才亮さいりょうには奥州おうしゅう戦争せんそう予言よげんをしました。

わたくし当秋とうしゅう八九月頃がつごろにならなければこちらへまいわけにはまいりません。それまでは奥州おうしゅう戦争せんそうにて御用ごようおおけませぬ。西国さいこくがたはやがてふねにてめてまいります……。』


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