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三尺坊と才一郎

九 えらいものにしてやる

 そのあさ長男ちょうなん太郎馬たろうま才一郎さいいちろうむかい、

昨晩さくばんほかにもなに神様かみさまからうかがったことがあるだろう。今朝けさのおまえかお莫迦ばかれしそうではないか。』

たずねました。それはひと笑壷えつぼはい才一郎さいいちろう様子ようす尋常じんじょうでないとたからでした。するとはたして

いこともありません……。』

という返答へんとうです。

矢張やはりそうだッたのだネ。差閊さしつかえがないなら、われわれもその吉報きっぽうのお裾分すそわけにあずかいものだネ……。』

じつ神様かみさまが、あなたをはじめほか人々ひとびとみな守護しゅごしてやるとッしゃいました……。』

『それは難有ありがたいが、ほかにもにかあるだろう。』

『わたくしのことえらいものにしてやるとおうせられましたので……。』

成程なるほどそれでめた! おまえ今朝けさのニコニコする様子ようすは、ドーもただごとではないとおもった。えらものとはおく御医師ごいしにでも出世しゅっせすることなのかね?』

『そうではないのです。殿様とのさまよりもえらいものになるのだそうで……。』

『こいつァドーもおどろいた! じゃ神様かみさまにでもなるのかね?』

『そうだそうです。』とあくまで真面目まじめに『しかし、このこと何卒どうぞ御内々ごないないねがいまする……。』

『ああいいとも。――めッたにおしゃべりはしないから安心あんしんするがいい。』

 みぎ天狗てんぐさんはそのきつづいて、ちょいちょいあらわれて色々いろいろこと才一郎さいいちろう指図さしずするのでした。

 二十託宣たくせんは、

『そのほうもいよいよ秋葉あきば大権現だいごんげんのおつきになされ、十二がつ朔日ついたちにはおやまれてかれる。』

というのでした。二十五にちよるのは、

太郎馬たろうま卓齋たくさい師匠ししょう泰治たいじとそのほうちちとには三尺坊さんじゃくぼうさまのお姿すがたおがませることになった。家内かないのものにおがませるかおがませぬかは一おう相談そうだんうえ返事へんじする。一たいそのほうをこれまで難渋なんじゅういたさせたのは、かためさせんがめにおれがしたわざである。寝小便ねしょうべんもせんであろう。そのほうのことはじつ赤児あかごうちから見込みこんでたのである。それゆえ今般こんぱんつきになれる……。』

 いで二十七にち夜半やはんぎに姿すがたあらわして才一郎さいいちろうげた言葉ことばは、

家内かないものどもに三尺坊さんじゃくぼうさまのお姿すがたおがませたいというねがいおもむきはかないたれども、しもべ利助りすけのみは不信心ふしんじんものゆえその不相叶あいかなわず……。』

 この託宣たくせんにつきて太郎馬たろうまが、『お供物そなえもの如何いかがいたすべきや』と才一郎さいいちろうたずねますと、ぎのようなこたえました。

供物そなえものなにらぬ、ただ清浄せいじょうなるみずおけれ、八足台そくだいせて鳥居とりいそとえ、なつめところよりたけよこたえて仕切しきりいたし、それよりうち何人なんびとはいれぬようにせよ。はいるとだいなる怪我けがをするぞ。そうじて当日とうじつ夕方ゆうがたよりうらてはならぬ。御来臨ごらいりん刻限こくげんしょう五ツどき時刻じこくきたらばいずれもうら礼拝れいはいたてまつるべし。御眷族ごけんぞくうちにはお手荒てあらなるおかたもあれば、ことによるとうちなかへお這入はいりなさると同時どうじ地震じしんのようなこと出来しゅったいせぬともかぎらぬ。されど人間にんげん怪我けがはさせぬから安心あんしんするがよい。そしてそのさいどうは一しんにオンヒラヒラケンノウソワカ――この真言しんごんとなえてれ。才一郎さいいちろう明日みょうにちより断食だんじきすべし……。』


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