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三尺坊と才一郎

四 銀紙ぎんがみ御幣ごへい

 さて荒菰あらごもうえかされた才一郎さいいちろうはとると、べつ怪我けがもしてりません。が、手足てあしこおりごとって、気息いきがすッかりえてります。町内ちょうない人々ひとびともききつけて才一郎さいいちろうめに水垢離みずごりるやら、また修験者しゅげんじゃ繁昌院はんじょういんびにくやら、いろいろ奔走ほんそうしてくれました。

 やがて繁昌院はんじょういんがやってて、ちてたものをひらいてると、二まい銀紙ぎんがみに四まいのおふだつつんであります。繁昌院はんじょういんはそのおふだむかい、なにやらくちなかとなえつつ、大麻おおぬさ才一郎さいいちろう頭上ずじょうっていのりますと、忽然こつぜんとして才一郎さいいちろうひらき、みずもとめてそれをみ、しきりにこすってります。

『これこれ才一郎さいいちろう其方そち何所どこってまいったのじゃ?』

 泰治たいじがそうたずねますと、才一郎さいいちろうは、

秋葉様あきばさまってまいりました。』

こたえたままふたた昏々こんこん寝入ねいってしまいました。

 その翌朝よくちょう才一郎さいいちろう平常ふだんとおをさまし、手水ちょうずをつかい、べつかわった模様もようえません。やがて、

はさみしていただきます。』

という注文ちゅうもんであります。

はさみはこれでよいか。』

 そうって一ちょうはさみわたしてやると、今度こんど

『あの銀紙ぎんがみつつんだものうなりました。』

という質問しつもんです。

銀紙ぎんがみならここにある……』

 昨日きのうたけはさんでおとしてあった銀紙ぎんがみしてわたすと、かれ落付おちつはらってみぎ銀紙ぎんがみつにり、たくみなつきで、あたかも平常ふだん手馴てなれしわざごとく、いと手軽てがる御幣ごへいきざみ、昨日きのうれたたけってくしけずり、それに御幣ごへいはさみました。わき見物けんぶつして泰治たいじはつくづく感心かんしんして、

『そのほう御幣ごへいきざむことは何時いつおぼえたのじゃ?』

昨夜ゆうべ御山おやまにておしえてもらいました』

『シテその御幣ごへいはいかにいたすのじゃ?』

『これは柳田家やなぎだけに一つ、町内ちょうないに一つ、私宅わたくしたくに一つ、それから親類しんるいへ一つ、おふだえて配分はいぶんするよう御山おやまおおせかったのでござります。これでわたし用事ようじみましたからモすこかしていただきます。莫迦ばかねむくてしょうがない……』

『これこれちょっとった。このおふだ幾日いくにちほど奉祭ほうさいすればよいのじゃ?』

御山おやまたずねましたが、まつるのは日数にっすうにはかかわらんそうです。信心しんじん次第しだいで一にちでも差閊さしつかえないともうすことで……。』

成程なるほどな……。では七かん奉祭ほうさいすることにいたそう。』

 そういうにも才一郎さいいちろうやぐッすり寝込ねこんでしまいました。


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