心霊図書館」 ≫ 「岩間山人と三尺坊」  ≫ 「岩間山人と寅吉

岩間山人と寅吉

 三十五 手柄話てがらばなし

 寅吉とらきちかつ空中くうちゅう飛行ひこうさい師匠ししょうから妙義みょうぎおくなる小西こにし山中さんちゅうてられ、こまててその土地とち大家たいかめてもらったはなし本文ほんぶんなかいてありますが、そのばん寅吉とらきち偶然ぐうぜんにも盗人ぬすびとらしました。ついでにその手柄話てがらばなし紹介しょうかいしてきます。――

わたしとまったうち相応そうおう身上しんじょうえまして、男女だんじょ十四五にんりました。わたしわきの一とかされ、ぎのには亭主ていしゅをはじめ、家内かないものどもがやすみ、台所だいどころにはおとこどもがました。

『すると夜更よふけになって、抜刀ぬきみったすごおとこどもが六七にんばかりいえなかはいにわかまどまえともして、二ほん長火箸ながひばしをわたし、そのうえに四ッ五ッ茶椀ちゃわんいてあかき、たがい私語ささやってもの相談そうだんです。家内かないものはそれともらず、みな高鼾たかいびき寝入ねいってりますから、わたしたまねて、そっとで、抜足ぬきあしして亭主ていしゅ枕元まくらもといたり、みみ口寄くちよせ、一しんをこめて、盗人ぬすびと這入はいった、きろきろとひくこえいました。すると亭主ていしゅはむっくとばかりちながら、盗人ぬすびと姿すがたつけて、たちま大音おおごえに、おとこどもきろ! 盗人ぬすびとはいった! と呶鳴どなてましたので、家内かないぢゅうが一にどっとびっくりしてをさましました。

『こりャかなわぬ、』とでもおもったものか、さいわ盗人ぬすびとどもは一もつらずにせましたので、あと亭主ていしゅよろこびは一ととおりでありません、散々さんざんわたしめたうえ御馳走ごちそうをしてれました。

あさになって門口かどぐちますと、汚物おぶつが五ヶしょばかりにしてあって、そのうえ草履ざうりせてありました。のちにこのことやま師匠ししょうたずねますと、うするのはひとまさせぬ邪法じゃほうだということでした。またはいってから茶椀ちゃわんいた理由わけは、いよいよ品物しなもの捜索そうさく着手ちゃくしゅするとき、それに汚物おぶつれて煮立にたてるめだそうです。その不浄ふじょう臭気しゅうきいえなかわたると、守護しゅごかみもたまりねてしますから、それで家内かないものめず、そのもの魂胆こんたんだといいます。――すべて神様かみさまというものはけがれをきらわれるから、いえなかつね清浄せいじょうにしてくべきであると、よくそう師匠ししょうわたしもうされました。』


戻る

目  次

次へ


心霊図書館: 連絡先