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岩間山人と寅吉

 三十四 左司馬さしま古呂明ころめい

 杉山すぎやま組正そしょうについではお馴致なじみ左司馬さしま古呂明ころめい二人ふたりのこってります。平田ひらたおう二人ふたりことにかかったものとえまして、これかんする質問しつもんをしてります。寅吉とらきち左司馬さしまかんする説明せつめいとおりです。

白石しらいし左司馬さしまもと妙義みょうぎ社人しゃじんとかで、元禄げんろく十三ねんがつ、二十さいときかいはいったときいてります。以前もと仏法ぶっぽうきであったといいますが、みちはいってからはすっかりぶつててしまったそうです。』

 杉山すぎやま組正そしょうおとうと古呂明ころめいかんする寅吉とらきち説明せつめいは一そうくわしくつ一そう面白おもしろいものです。――

古呂明ころめいというひといたって温厚おんこうひとで、つねぎょうたすけ、ことおもこと以心いしん伝心でんしんさとります。もとときつねつくえもたれて記録きろくし、またいろいろの細工物さいくものつくったり、あるい国々くにぐに山々やまやまってようべんじたりしますが、いつも師命しめいたず、さっさとかたづけてしまいます。私達わたしたちのような未熟みじゅく弟子でしもよくこのひとのお世話せわになります。私達わたしたち悪戯いたずらでもしますと、こののちはそんなことをしてはけない。師匠ししょうからしかられるぞと、内密ないみつおしえてくれたことが何遍なんべんあったかれません、しかし師匠ししょうをさしして私達わたしたち事物ものごとおしえることなどはなく、師匠ししょうからおしえろとわれてからはじめておしえます。師匠ししょうはきびしいひとで、一ならったことをわすれると、ウンというほどお目玉めだま頂戴ちょうだいするからよくおぼえますが、古呂明ころめいさんは、わすれたらまたおしえてくれるだろうと油断ゆだんをするせいかよくおぼえません。

『この古呂明ころめいさんは多分たぶん師匠ししょう分身ぶんしんではなかろうとおもいます。だい一、二人ふたりおもざしがちがいます。師匠ししょうは四十あまりとえますが、古呂明ころめいさんは四十らずにえます。師匠ししょう議論ぎろんわないことがあって、諫言かんげんされたりします。それを師匠ししょうもちいないと、古呂明ころめいさんはおこって、それなら自分じぶんはこれからおいとまをいただいてほかへまいりますとって出掛でかけてきます。あるときなどは、きもののことにつきて兄弟きょうだいたがいあらそい、古呂明ころめいさんは自分じぶんいた数巻すうかん書物しょもつのこらず焼棄やきすてたこともありました。しかしはなれてるのはホンの当座とうざだけで、たがいこいしくなるものとえまして、やがてまたかえってて、もととお師匠ししょうたすけ、すこしの隔意へだてえません。まこと不思議ふしぎ間柄あいだがらです。

『そうそうわたしは一じつ合点がてんかないことせられました。んでも師匠ししょう手放てばながた仕事しごとにかかってりますと、古呂明ころめいさんが師匠ししょう代理だいり小便しょうべんしてやったのです! このことばかりはいまでもちません……』


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