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岩間山人と寅吉

 三十二 岩間山いわまさんの十三天狗てんぐ

 これで寅吉とらきち身上みのうえばなしおわりです。平田ひらたおうならびに門人もんじん記録きろくはそれっきりプッリとれてしまってあとがありません。たとえば面白おもしろゆめなかばに突然とつぜんめたようなもので、物足ものたりないことおびただしい。読者どくしゃ不本意ふほんいでしょうが、筆者ひっしゃ尚更なおさらそうであります。

 寅吉とらきちはそのどうなったか?――心霊しんれい科学かがく研究けんきゅう会員かいいん熱心家ねっしんかで、それにつきて綿密めんみつ調査ちょうさをすすめているものがありますからいづくわしいことが判明はんめいするときがあるとぞんじます。これによると遺憾いかんながら寅吉とらきち霊的れいてき能力のうりょくはそのすッかりおとろえ、ただの凡人ぼんじんとして死歿しぼつしたようであります。下総しもうさ銚子ちょうしいまでものこ天狗湯てんぐゆという風呂屋ふろや寅吉とらきち形見かたみしなだということです。霊覚者れいかくしゃ凡化ぼんかということははなはかなしい事実じじつですが、霊媒れいばい身辺しんぺん保護ほごしている研究者けんきゅうしゃ死去しきょするとか、霊媒れいばい緊張味きんちょうみうしなったとかした場合ばあいには往々おうおう見受みうくる現象げんしょう致方いたしかたがありません。わたしるところによれば、あの寅吉とらきちとておそらく平田ひらた篤胤あつたねおうあっての寅吉とらきちであって、霊界れいかい人物達じんぶつたちがこの熱心ねっしん老学者ろうがくしゃ赤誠せきせい感動かんどうし、ここに寅吉とらきちという一の電話でんわ交換局こうかんきょくごときものをしつらえてくれたのだろうとおもいます。世人せじん兎角とかく好霊媒こうれいばいると、んだ堀出物ほりだしものでもしたようにかんがえて矢鱈やたらはやてる傾向けいこうがありますが、おそらくそれは間違まちがいでありましょう。霊媒れいばいもむろん大切たいせつですが、一そう大切たいせつなのは真面目まじめ研究者けんきゅうしゃ発生はっせいすることです。現幽げんゆうはつまり一じょで、現界げんかい熱心ねっしんもとむるものがあれば霊界れいかいほうから面倒めんどう適当てきとう霊媒れいばいつくってくれる――そうかんがえて大過たいかないようです。

 それはかく平田ひらたおう寅吉とらきちとらえて種々しゅしゅ質問しつもん連発れんぱつし、これ筆録ひつろくしてありますから以下いか心霊しんれい学上がくじょう興味きょうみある個所かしょ選出せんしゅつしましょう。

 何人なんびと常陸ひたち岩間山いわまさんについてくわしいことをききたくおもうでしょうが、平田ひらたおうもこれにつきて質問しつもんしてります。それにたいする寅吉とらきちこたえうです。――

岩間山いわまさん筑波山つくばさんから北方ほくほうへ四ばかり、足尾あしお加波かば吾国あくになどとならびてツイ笠間かさま近所きんじょにありますが、みねには愛宕宮あたごのみやまつってあります。岩間山いわまさんにはもと十二にん天狗てんぐましたが、四五十ねんぜんから筑波山つくばさんふもとなる長楽寺ちょうらくじというてら真言宗しんごんしゅうぼうさんがくわわりましたのでいまでは十三にんになりました。このぼうさんはなかなかの仏道ぶつどう熱心家ねっしんかで、平生へいぜいそらむかってみちのことばかりかんがえてりましたが、釈迦しゃか如来にょらいむかいにみちびかるるまま、よろこいさんでれられてくと、その釈迦しゃかというのはじつ岩間山いわまさん天狗てんぐであって、自分じぶんもとうとうその仲間なかまりをしてしまったのだそうです……』


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