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岩間山人と寅吉

 十三 めずらしい腕白わんぱく

 寅吉とらきちは一ほう剽軽者ひょうきんものであると同時どうじに、他方たほうおいてはまた無類むるいりの腕白わんぱく小僧こぞうでありました。平田ひらたおうすこおも仔細しさいがあるので、わざすこしもこれさからわず、かれくまま、いままにきますと、先方むこうでもイイになっておう玩弄物おもちゃにしまして、あるいひざりかかったり、あるいかたつかんだりして、門人もんじん教授きょうじゅ書見しょけん邪魔じゃましました。

 それからまたつくえふち噛砕かみくだく、きりつくえあなける、ふでくだく、硯屏けんびょう孔雀石くじゃくせき雲根石うんこんせき小刀こがたなきずをつける、墨汁すみをこぼす、はいたてる、にわしては草木そうもくをへしる、盆栽ぼんさいはちころがす、燈籠とうろうだの板壁いたかべだののたかものうえのぼって、おかまえなしでポンポンりてしたものにじる、竹馬たけうまって泥濘ぬかるみちた泥足どろあしあらわず、そのまま座敷ざしきあがる、りたての障子しょうじをビリビリやぶる。はなはだしきはたけかみ鉄砲てっぽうつくって小石こいしめて座敷ざしきなかはなしてふすまやぶったり、天井板てんじょういた打貫うちぬいたりする。

鉄砲てっぽうだけ危険あぶないからめるがい』と制止せいししますと、その当座とうざはハイとってめますが、じきわすれてしまってまたします。就中なかんずくおう高弟こうてい竹内たけうち健雄たけおごときは、筆録かきものをしてたところを、イキナリみみあな小石こいしまれて、んでもないわされました。野性やせい野性やせい、さすがは山奥やまおく自然しぜん教育きょういくけたものに相違そういないということだれにも点頭うなづかれました。

 かれまた細工物さいくもの大変たいへんきで、がなすきかな種々いろいろ品物しなものつくりますのでなたのこぎりみなメチャメチャにつぶされてしまい、日用にちよう台所だいどころ道具どうぐまで大半たいはんこわれてやくたないものにされました。で、平田ひらた家人かじんは、ツクヅク寅吉とらきちには手古摺てこずりましたものの、さりとておう秘蔵ひぞう神童しんどう? のことですから充分じゅうぶん制裁せいさいくわえられず、ぢッと辛棒しんぼうしてふりをしてました。

 寅吉とらきちおびかたなどはいつもグルグルきのきわめて無雑作むぞうさなもので、キチンと背後うしろむすぶようなことけっしてない。あさなどは寝床ねどこからあがりざま、おびめぬうちにパタパタして、だれでもかまわずつかり次第しだいびついて角力すもういどみます。わざけてやるときらいますから、ドシドシげつけてやりますと、何遍なんべんでも、自分じぶんけるかぎりはあがってろうとします。ってもけても、何方どちらにしても厄介やっかいまんなシロモノでした。

 寅吉とらきちはじめてったひとたいしては、いつもしばらくのあいだそのかおをぢっとつめてるのがくせでした。そしていよいよ自分じぶんったとときは、だれでもかまわずそのかたあがって首馬くびうまをやらかします。天真てんしん爛漫らんまんめてよいのか、無法むほう野蛮やばんけなしてよいのか、かくめずらしい腕白わんぱく小僧こぞうでありました。


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