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岩間山人と寅吉

 九 二あることは三

 篤胤あつたね隣家りんかにわすみには一ほん柿樹かきのきがありまして、そのこずえに、いづ茶目公ちゃめこう仕業しわざでしょう、とりるための黐擌ほご仕懸しかけてありましたが、たまたま一ひよどりんでてそれにかかりました。

 『オヤオヤ可哀相かわいそうに……。となりの人達ひとたち殺生せっしょうきでこまってしまう。』

彼様あんなにもちへばりついてしまっては、とてもモーげられまい……。』

 平田家ひらたけ人々ひとびとののしさわぐのをきいて寅吉とらきちはヅカヅカと縁先えんさきへしてました。

ンだひよどりか。――わたしが一つとりがしてようか。』

『でも木登きのぼりはあぶないからおしなさい。』

だれかがもうしますと寅吉とらきちは一しょうして、

わたし木登きのぼりなンかしません。茶碗ちゃわんを一つしてください。』

 なにるかとりますと、かれみぎ茶碗ちゃわんみずぎ、書斎しょさい縁端えんばたちて、なにやら呪文様じゅもんようこととなえつつ、茶碗ちゃわんみず指先ゆびさきにてはじきてとり吹飛ふきとばすさま数回すうかいかえしました。すると不思議ふしぎ不思議ふしぎ! いままでうごけなかったとりもちからはなれてしたえだち、其所そこでしばらく羽繕はづくろいをして、たちまちツイとってしまいました。

『ドーもこりャ神業かみわざじゃ! とても人間にんげんできげいじゃござらぬ。』

拙者せっしゃ当年とうねんって六十何歳なんさいになるが、かかる不思議ふしぎ今日こんにちはじめて実見じっけんいたしてござる。』

 感歎かんたんこえがしばしはりもみませんでした。

 寅吉とらきちはこの成功せいこうに一そう乗気のりきになったものとえまして、今度こんど東風こちかせてせるとって、秘伝物ひでんものの一つな風神ふうしんぬさり、それにかみうつしをおこないました。

 当日とうじつはまるきりかぜい、極度きょくど静穏せいおん日和ひよりでした。

『いかに天狗様てんぐさんのお弟子でしだとて、ンなかぜおこるかしら……』

 何人なんびとむねにもこの不安ふあんささやいてりましたが、ほどなく、晩秋ばんしゅう木々きぎこずえたちまちザワザワというおとがして、東風こちかぜ猛烈もうれつおこったのには、坐客ざかくどう吃驚びっくり

『イヤおそった!』

『ドーもおどろきました!』

 さまざまの感歎詞かんたんし人々ひとびとくちかられました。

 二あることは三とやら、寅吉とらきちはモー一つ天気てんき予報よほう人々ひとびとおどろかせました。

今日きょう夕暮ゆうぐれからあめになる。』

 この予言よげん見事みごと的中てきちゅう夕暮ゆうぐれからはたしてビショビショあめしました。


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