心霊図書館 > 「心霊研究とその帰趨(神霊主義)」

心霊研究とその帰趨

十一、直接談話その他の物理的現象

 本章においては直接談話現象をはじめ、その他の諸物理的現象を一括して講述し、これで一とず心霊現象の紹介に結末をつけようかと思う。前後八十年間に蓄積せられたる諸現象は、種類から言っても、又性質から云っても、なかなか豊富複雑を極め、とてもその全部にわたりて詳しい紹介を試みる訳には行かない。勢い私の講述はわずかにその粗枝大葉を捕えて、心霊現象に対する基礎的概念を築く丈の仕事にしかならなかったが、しかしこれは最初から私の予定の計画でもあった。概念から細論に、冷かし半分から真面目な研究へと、進んで行くのが人間の辿るべき常道である。私はこの講述が、痛切に何物かを求めつつある現代の多くの人士に対して、全然無意味におえるものではないことを期待する。

 早速直接談話現象の講述に取りかかるが、これは日本では最も珍奇な現象で、うっかりそんな話でもすると、頭から荒唐無稽視されるおそれがないでもない。現に私なども最初書物の上でこれを知った時には何やらしっくり腑に落ちなく感じた。が、英米各地で散々これを実験するに及んで、成るほどこいつは素晴らしいものだと痛感するようになった。幽明交通の形式も沢山あるが、公平に考えて直接談話が一ばん優れたものの一つではないかと思う。

 直接談話の種々相――直接談話現象は読んで字の如く、死者の霊魂が霊媒の躯を借りないで、直接空中から発声する現象なのである。この種の霊媒の最も多いのが北米合衆国で、ほとんどどの都市にも一人や三人位の直接談話霊媒が居ないところはない。従って北米人士間にありて、この現象はほとんど常識化してしまっている。米国につぎてこの現象のさかんなのが英国であり、仏、伊、独等にも近来次第に拡がりつつある。日本では龜井霊媒が現在ただ一人の直接談話の能力者である。

 直接談話現象の種々相につきては、簡潔を期すべく左にその要点を個条書きにする。――

(一)直接談話の霊媒は多くは通常意級のままで残り、稀に無意識の入神状態に入るものもある。

(二)音声は普通霊媒の身辺から三フィート乃至五フィートを隔てたる空中から聞え、こちらの注文によりて容易にその場所を変える。

(三)この現象の背後には必ず霊媒の司配霊しはいれいと称するものが一人乃至数人控えてり、必要に応じ実験者に対して空中から話しかける。

(四)この現象は暗中にありて最も強力である。赤灯下でも相当音声は聴えるが、しかし暗闇で行う時より遥かに声が低い。赤以外の光線下ではほとんどききとれない。

(五)エネルギー不足のめ音声が低い場合には拡声用の喇叭ラッパを用いる。喇叭ラッパは通例アルミニューム又は厚紙で造り、長さは二尺内外である。

(六)右の喇叭ラッパは単に実験室の床上に立てて置けばよい。そうするとそれが勝手に空中に舞い上り、列席者の一人の耳元に近づいて話しかけるのである。時とすれば喇叭ラッパの尖端が軽く列席の肩などに触れて、まえもってその注意を喚起する。

(七)喇叭ラッパの両端には通例燐性の光帯を附けて置くので、暗闇の中でもその運動がよく判る。

(八)直接談話の最大の強味はその音声並に用語が本人固有のものであることである。(例えば外国で実験しても、日本人の霊魂ならば生前そっくりの声で日本語を喋る。)

(九)立会の人数はさして関係もないが、通例三四人乃至十人迄位が適当である。

(十)空中の音声が霊媒と独立していることを証明するめには、霊媒の口を絆創膏で塞いだり、水をくくませたり、又一種の発声防止器を使用したりする。しかし従来の実験によれば空中の音声は依然として止まない。

(十一)空中の音声はすでに各地で蓄音器のレコードに収められているから、幻錯覚説は成立しない。

 大体この説明で直接談話現象の概念丈はられたことと思う。続いてこの方面の代表的名霊媒を紹介することにする。

 リイド夫人――真先まっさきに挙げねばならないのはけだし北米のリイド夫人であろう。現在ではすでに老境に入りて、目覚ましい活動はできない。現に昭和三年の秋、北米通過の途次、私は電話で同夫人に実験を申込んだが、とうとうこれに応じてくれなかった。しかし今から二十余年の昔には、直接談話といえばずリイド夫人という位の活躍振りであった。彼女は独りその本国のみならず、遠く海を越えて英国に渡り、幾多の名流の実験に応じ、力強き印象を心霊史上に残したのであった。

 リイド夫人の直接談話の実験と不離の関係にあるのは、実に故文豪ステッドの霊魂である。ステッドがその生時から特に目をかけた霊媒であるめか、彼は何回となく同夫人の実験会に出現して、例の明快めいかい直截ちょくさいな句調でさかんに地上の人達に呼びかけたのである。医者のジョンソン博士、霊智学徒のスキャッチャード嬢、外交家のミヤトヴィッチ伯、又心霊学徒として有名なムーア海軍中将、牧師のトウィーデル師、ロスセーのコーツ教授等々、いずれもステッドに関する面白い実験記録を残している。それ等の中から標本として一つ二つ拾い出して紹介して見やう。

(ジョンソン博士の記録)――約五分ほど過ぎたと思う頃、蜜柑大の光球が私の正面の所に停止した。そして私の旧友ダブリュー・ティ・ステッドの、底力のこもれる音声が空中から起った。人も知る通り彼は今から数年前、太西洋上においてタイタニック号が沈没した時、溺死の運命に際会さいかいしたのである。普通の挨拶を交換した後に、次のような対話がわれわれの間に行われた。

余『ステッドさん、私はあなたがはたして御本人に相違ないか否かを、ず第一に確かめて見たいのです。私が南阿に出発ったのは一九一一年ですが、その直前私があなたに対して何をしてあげたか、今でも記憶してられますか?』

ス『そりャ記憶して居ますよ。あなたは私の眼鏡の度をしらべてくだすった。』

余『全くその通りです。しかし右の検査は一体何所でりましたか?』

ス『たしかキァヴェンディッシ・スクエーアのクイン・アン街五十五番地だと覚えています。』

余『よく当りました。ところでステッドさん、われわれはその晩連れ立って出掛けましたが、何所へ行ったか御記憶がありますか?』

ス『さァ……』

 ステッドがちょっと胴忘どうわすれしているらしいので私が誘いをかけた。

余『私達はザンシッグス座の見物に行ったと思うが……』

ス『イヤ違います違います。私達はソムソンス座へ行ったのです……。』

余『そうですそうです! 私は今ようやく想い出しました。ソムソンス座でした……』

 この問答は死後において個性存続の証明としてはなはだ有力であると思う。私は最初それがザンシッグス座であると確信し切ってり、ステッドの注意によりて初めて自分の記憶の間違っていることに気がついた。この現象は到底、例の思想伝達説をもって一掃し去ることはできないのである。

 つづいてわれわれは互に当夜の出来事を回想して談笑にふけったが、やがて私は話頭わとうを転じた。

余『実はステッドさん、今晩は別にあなたにお目にかかろうと思って、ここへ出掛けて来た訳ではないのですが……。』

ス『こりァドーも御挨拶ですなア……。が、私には最初からあなたの御希望がよく判って居ます。あなたの二人の御子息達が、いずれもメソポタミアの塹壕内で戦死したので、あなたはその二人に逢いに来られたのです。しかし御安心なさい、二人は私が伴って来ましたから、私が退いた後でゆっくり話し込まれたら良いでしょう……。』

 そう言った時に例の光球が俄然消失し、そしてすぐ私の末のせがれの、日頃きき慣れた音声が空中に起った……。

 ジョンソン博士の記録はまだ長くつづいているが止むを得ず割愛し、モ一つムーア海軍中将の綿密な記録のホンの一断片、ステッドの愛娘エステル嬢が亡父と話を交えた個所丈を紹介することにしよう。

 (ムーア中将の記録)――すくなくとも四十分間にわたり、ステッドはその愛娘に話しつづけた。私も同席しために、その一言半句をもききもらさなかった。その際の談話こそは、私のきいた直接談話中最も傷ましいものであり、同時にまた最も真に迫り、少しも疑議を挿むの余地なきものであった。ステッドが現われたのは、自分の生前の原稿書類をいかに処理すべきかを、彼の愛娘に指図せんがめであった。エステル嬢の胸はいうまでもなく極度にみだれた。彼女の痛烈なる悲みはとうとうその父にも反応した。さすがのステッドも Oh my God! と慟哭どうこくの声をもらした。そしてその晩の実験はそれっきりになってしまった……。

 ここまで進むとリイド夫人の直接談話は単なる実験の域を離れて立派に実用化してしまったといい得る。さればバアレット博士なども、口を極めて同女史の能力を推奨し、『彼女は世界稀れに見る所の正しい能力者で、彼女によりて発生する直接談話の音声並にその内容は、全然詐術又は共謀の疑惑の範囲を脱するものである』と言っている。

 バリアンタイン――近年世界の心霊学界において特に有名になったのは米国のバリアンタインである。ロンドンの上流界に名を知られている文士のブラッドレー氏が、今から約十年前、不図ふとした動機で彼の異常能力を認め、自費をほうって、前後数回にわたり、バリアンタインをロンドン郊外の自宅に招き、英国一流の学者、政治家、文士、俳優等をして自由にその現象を参観せしめた上、綿密にその実験記録を作成して二冊の書物として出版しために、直接談話現象の何物たるかは非常な速力で英国に拡まってしまった。何にしろブラッドレー氏は金もあり、筆も立ち、お負けに馬力が人並外れて強く、今頃お霊魂の実在を知らないような莫迦ばか者は犬猫にも劣る、と言った具合に呶鳴どなり立てたのであるから、比較的短日月の間にその反響が現われ、従って直接談話といえばすぐにバリアンタインの名を想い出すようになってしまったのである。その点においてバリアンタインは霊媒として非常な倖運こううん児と言ってよい。更にその後北米の心霊家として有名なキアノン夫妻が、彼の物質的並に精神的の保護者となり、極力推奨につとめたので、その名声は一層高くなった。私もキアノン夫妻の斡旋でボストンと紐育ニューヨークとで数回バリアンタインの実験を行うことができた。私の観る所によれば、彼の能力は実際優秀には相違ないが、しかし今日となりては、この方面の能力者が他にも沢山輩出してり、必ずしも彼一人の独擅場どくせんじようともいい兼ぬるようである。

 彼を通じて起る直接談話で最も興味あることは、列席者が外国人である場合に、空中に起る言葉がしばしばその人の国語であることである。ロンドン滞在の駒井權之助氏も、一夕ブラッドレー氏に招かれて実験に臨んだ一人であるが、その際数年前に死んだ同氏の実兄大谷という人が現われ、日本語で簡単な挨拶を交換した。その記事はブラッドレー氏の著書中にも載せてあるが、私自身駒井氏の口から直接当夜の実況をききもした。

 私の実験の中では、昭和三年十一月十七日の夜、ボストンのクランドン博士邸で行われたものが、特に私の心に強く印象づけられてる。何にしろ直接談話の二大霊媒たるバリアンタインとクランドン夫人とが一堂に会合し、両人協力して実験を行ったのであるから、その成績は特に優れてたらしい。

 私の当時の手記からその要点を抄出する――

 十七日午後八時三十分一同実験室に入りて着席、クランドン夫人は正面の小卓子を前にして坐り、その左側にはバリアンタイン、それから浅野、ロージャース博士(スミス大学の心理学教授)、キアノン判事、同夫人、ジョンソン博士、クランドン博士等の順序で卓子を囲んで坐る。列外にも数人加わる。赤灯にかわるや否や、司配霊しはいれいのウォルタアの口笛ず空中に起る。霊媒の口辺から約三フィート乃至四フィートの距離にある。つづいて、『ハアロー!』とやや錆のある、元気な青年らしい声で呼びかける。列席者の大部分は懇意な人間に対すると全然同一気分で、ウォルタアと挨拶を交換する。私は初対面なので多少丁寧に『ウォルタアさん、お目にかかるのは今晩初めてですが、雑誌や書物の上であなたの事はよく存じて居ます。私のめに実験に応じてくだすって誠に有難う……。』『イヤ、アサノさん、よくお出掛けくださいました。今晩は日本人の霊魂も数人ここに現われることになっています……。』まるで生きたアメリカ青年と問答するのと少しも変らない。ウォルタアがかく活動している間に、いつしか霊媒のクランドン夫人は深き入神状態に入り、軽きいびきがきこえる。バリアンタインは平常の通り談笑自在、そのうちバリアンタインの司配霊しはいれい達も、すてきに大きな声で空中から呶鳴どなり出す。『日本人の霊魂達が近づきつつあります』などという。

 要するに司配霊しはいれい達は直接談話で自由自在に列席者達に問答し、実験に関する注意を与えたり、時には冗談も言うのである。ことにウォルタアの霊魂は機智きち縦横じゅうおうと言った形で、ちょいちょい警句を吐いてわれわれを笑わせた。

 日本人の霊魂が喇叭ラッパを通じて日本語で話しかけたのは多分九時半頃でもあったらう。卓子の傍に床上に置いてあったアルミの喇叭ラッパがいつしか独り手に空中に舞い上り、ず軽く私の肩に二三回触れた。これは私に対する挨拶なのである。私は早速日本語で『どなたですか?』と質問すると、最初は喇叭ラッパを通じてはっせられるる返答がいかにも低声で不明瞭であったが、しかし数回問い返した結果、それが一昨年大阪で死んだ長南雄吉氏の霊魂であることが判った。『ワタクシ』『オサナミ』『オホサカ』『アリガトウ』『サヨナラ』等の言葉はよくききとれたが、他は辛うじて前後の意味を推定し得るに過ぎなかった……。

 霊魂の方で慣れないめか、日本語の発音は他の談話に比してすこぶる不完全ではあったが、しかし霊魂がその母国語を使用することの、一の有力なる実証にはなった。ブラッドレー氏の報告によればバリアンタインを通じて現われたのは、日本語の外に、支那語、ロシア語、ドイツ語、ウェールス語、その他であるということである。

 その他の直接談話霊媒――バリアンタインほど有名ではないが、その技能において必らずしもこれに遜色なき霊媒は、前にも述べた通り他にも沢山ある。グラスゴーの心霊家フィンドレー氏によりて立派な記録を残されたスロウンは、一介の労働者であるが、無慾恬淡ていたんな人物で、よほど優れた能力の所有者であるらしい。デトロイト市のスチュワート夫人は、私も先年実験したが、その後ニューヨルク市の心霊熱心家ドルーエ夫人の交霊会『ステーション・アストラル』に招かれて活動し、好成績を挙げつつある。お同会で特に優秀な技倆ぎりょうを発揮しつつある霊媒はメーナ・テーフ嬢で、これを通じて故大統領のルーズヴェルトだの、発明王のエヂソンだのが現われ、又る時はドルーエ夫人と親交ある正金銀行員、柏木秀茂氏の亡児が現われ、日本語で空中から話しかけたとの事である。更にエヂソン研究所の技師ハッチンソン博士が同所に出張し、エヂソンの直接談話をレコードに収めることに成功したのは特に興味深き事柄である。シカゴ市のウッドウァース夫人が又優れた直接談話の霊媒で、住宅の地下室を研究所に充て、さかんに実験と霊媒養成とに従事してる。私は同所に二日間滞在し、いろいろの実験を試みた中に、空中の音声と各種の光線との関係をつきとめ得たのは就中なかんずく面白かった。暗中ではっきりきこえる音声が、赤灯にかえるとぐっと低声になる。更に他の光線にするとほとんど肉耳には感じないほどの低声となる。音声が消えるのではなくして低くなるのである。ひとり直接談話に限らず、一切の物理的現象と光線との関係は、たしかに今後の大切なる研究題目に相違ないと思われた。

 米国その他には直接談話の霊媒が他にも沢山るので一々これを紹介することはできない。日本では目下龜井三郎氏が唯一の存在で、すでに蓄音器のレコード吹込にも成功した。最初は司配霊しはいれい印度インド人モゴールが覚束ない英語と日本語とを喋るに過ぎなかったが、近来は木村という陸軍軍医の霊魂がその補助霊となっために、流暢明快な日本語が自由に現われるようになり、一大進境を認めた。龜井氏の能力は今後最も多くこの方面に活用されるのではないかと思われる。

 内面的機構――最後に直接談話現象の内面的機構にきてできる丈の説明を試みる。この現象にあっても、他の物理的心霊現象と同じく、エクトプラズムが主要なる原料となってり、そしてこれを抽出処理する者は主として霊界の住人、所謂いわゆる司配霊しはいれい達である。直接談話の形式には大体三種類ある。第一は、肉眼に見ゆるほど、濃厚に物質化した霊魂の口を使って発声するもの、第二は、物質化した姿は見えないで、ただ音声のみ空間からきこゆるもの、第三は、喇叭ラッパを通じてきこゆるもの、である。畢竟ひっきょうこれは抽出したエクトブラズムの多寡、環境の相違その他に基因するものと推定される。右の中第一の場合はむしろこれを物質化現象として取扱うべきで、直接談話としては変則に近い。理想的の直接談話としては第二の場合を推さねばならぬ。発声用として是非とも必要なるは、口頭機関と呼吸機関とであるから、司配霊しはいれい達は何は措いてもその作製に全力を挙げるらしい。スロウンの司配霊しはいれいの物語る所によれば、彼等はエクトブラズムを主成分とせる一種の物質を用いて、ず口、舌、喉、等に似せた仮面マスク様のものを作る。話しい霊魂は自分の顔をこの仮面マスク突込つっこみ、ピッタリと附着せしめるから、その仮面マスクはやがて彼が生前持っていた肉体の喉頭機関と全く同型のものとなる。つまり幽体の器官は再び肉体に似た物質の被物ころもを着たことになるから、生前そっくりの音声が出る訳なのである。口頭機関はこれで出来上ったとして、モ一つ必要なのは空気を送ってこれを動かすめの呼吸機関、つまり肺であるが、これはただ空気を送るめの用具であるから、単なる一個の管又は袋であってよい訳で、そして普通霊媒の肺臓と連絡を取り、その働きを利用することにしてあるらしい。フィンドレー氏は現に霊媒の口辺から幽かなシューシューという音が漏れるのをきいたと言っている。最初霊魂達は、比較的鈍重なこの口頭機関を動かすのに骨が折れるが、幾回か練習を重ねているうちに次第にうまく行くようになるらしい。第三の喇叭ラッパを通じて談話する場合は、これは音声が低い時に止むを得ず行うもので、勿論むろん喇叭ラッパはエクトブラズム製の棒又は偽手で運搬され、その仕事は発声係とは全然ちがった他の補助霊の受持にかかるらしい。お霊界通信によれば、その際発声機関は全部喇叭ラッパの内部に装置され、従って喇叭ラッパの細い方の口が対話せんとする相手に向けられるとの事である。この喇叭ラッパ使用の最大弱点は、音声が妙にガンガン響いて、充分に本人の肉声を髣髴ほうふつせしむることができないことである。その点第二の場合の如く効果百パーセントという訳には行かない。

 その他の物理的現象――以上で直接談話の講述を打ち切り、最後に『直接書記』又は『石盤書記』『直接作画』『耐火現象』『杖卜法』等につきて一瞥を試み、もってこの章をおわろうと思う。

 直接書記ダイレクトライティング又は石盤書記スレートライティングというのは、直接に霊媒の手を使わず、独り手に文字が紙又は石盤の上に書かれる現象である。普通直接書記は暗闇の中で起り、灯火をつけて見た時に初めて文字が書かれてあるのを発見するのである。石盤を使用するのも畢竟ひっきょう同工どうこう異曲いきょくである。普通木框きわくの附いた石盤を二枚重ね、その隙間に石筆を挿入して、ひもでしっかりくくりつけて置く。そして霊媒並に立会人達がこれに手を載せてると、やがてギイギイ石筆の走る音がして、書きおえると、敲音たくおんもって通信完了の相図あいずをしてくれる。そこひもを解いて見ると、盤面には時として五十語百語にのぼる死者からの通信文が現われてるのである。この種の霊媒としては北米のブルーデン夫人、バングス姉妹等が最も有名である。他にも英国のホーム、ステーントン・モーゼス、北米のケート・フォックス等枚挙にいとまなしである。龜井霊媒にも時としてこの現象が起る。同霊媒はある時私の把持はじせる包装した石盤面に約一時間半の距離から白墨で文字を書いたことがある。

 直接書記の内面装置は、卓子浮揚その他の場合と同じく、大体エクトブラズムの偽手の作用と考えられる。時とすればこの現象の作成に詐術の用いられることもあるであろうが、それが実験的にも又理論的にも、共に成立し得る心霊現象であることは疑うの余地がない。

 直接作画ダイレクトドロウィングも大体前者に酷似し、単に文字の代りに絵画が現われるという丈の相違である。古くは北米のフレンチ夫人、蘇国スコットランドのヂュガイド等をげ得るが、現代ではバングス姉妹が有名である。二個の取枠にケンバスを張り、それをぴったり合わせて卓上に置き、二人の姉妹が各々片手でそれを支える。すると約十五分間内外で、種々の色彩がケンバスの内側に現われたり、消えたりする、丁度画家が構図に苦心してると言った形、やがて一気呵成いっきあせい的に絵画が出来上る。肖像画などは、しばしば註文者の懐中している写真の模写であったりする。

 耐火現象ファイアテストという部類には本邦で行わるる火渡り術、焼火箸しごき術なども含まるるに相違ないが、英国初期の大霊媒ホームに起った耐火現象に至りては、たしかに破天荒と言ってよい。ホームに関する記事は沢山あるが、一例としてジェンケン氏の実験記事を紹介する。『恍惚状態に入りたるホームはわれわれに驚くべき諸種の現象を見せた後で、やおらストーブの前に跪き、両手をもって炎々と熱ゆる石炭を掻きならして火勢を煽り、いきなりその火焔の真只中まっただなかに顔面及び頭部を突き込み、言わば熱ゆる石炭を枕にして平然たるには仰天せざるを得なかった。私は仔細に実況を凝視したが、火焔はたしかにその頭髪を包んでた。彼が頭を抜き出すのを待って直ちにしらべて見たが、ただ一本の毛髪も焼けてはいなかった……。』一見眉唾物らしく思われるが、他界の技師達が、耐火性の防遮物をもって、霊媒の頭部顔面等を包んだとすれば、断じて不可能の事柄とも思われない。日本古代の探湯くがたちなども、火と熱湯との相違こそあれ、原理としてほぼ同一性質のものに相違ないと思う。

 杖卜法ダウジングというのは、双股のある樹枝を用いて水脈又は鉱脈等の発見を行うヤリ方で、西洋では以前から行われてる。術者が右の樹枝を手に持ちて、試験せんとする地面の上を歩くと、る地点に達した時に、右の樹枝が猛烈に歪み捻れるので、其所そこを掘って見るとはたして水脈が発見されるというのである。バアレット博士がこれにきて綿密なる学術的調査を遂げ、その成績を心霊協会の報告書に発表してるが、この方法で異常の好成績を挙げた実例がすこぶる多い。実験としては、皿を伏せてその下に金属を隠し置き、杖卜法で首尾克くその所在地を発見せしめたことがある。最も顕著なる事実はオーストリア軍に属せるサッパー・ケレーという術者が、サブラ湾の附近で三十二個の井水を発見した話である。トルコ軍の方では水の不足のめに、敵軍が必らず撤退するものと予想してたのであるが、この井水の発見ですっかりあてが外れたのであった。この現象は、外面的には単なる無意識の筋力作用としか思われないが、それではごうも内面的機構の説明とはならない。爾来じらい物理学上からもいろいろの学説が提出されていものの、まだ何人をも首肯しゅこうせしむるものは一つもない。で、矢張りこれは、術者の背後に特殊の司配霊しはいれいが働いてり、適当の地点に達した時に、その手にせる樹枝の上に働きかけるのであると解釈するより外に致方いたしかたがないようである。


(参考書)

Toward the Stars. The Wisdom of the Gods. By Dennis Bradley.

 バリアンタインに起った現象の詳しい実験記録である。

The Facts of Psychic Science and Philosophy. By C. Holms.

 一般的の参考書であるが、その中にはリイド夫人に起った直接談話現象その他の物理現象に関する精細なる記事がある。

The Great Problem. By Dr. C. L. Johnson.

 その第九章はリイド夫人に関する興味ある記事である。

Station Astral. By B. C. Drouet.

 三年間にわたりて毎週一回づつ催された直接談話現象の実験記録である。最近の出来事なので特に興味が多い。

On the Edge of the Etheric. By J. A. Findlay.

 スロウンを通じて起った直接談話現象を捕えての有益な研究である。近来の良著。

Modern Psychic Mysteries. By. C. K. Hack.

 本書中にもスコット侯爵その他に起った直接談話に関する記事がある。

心霊講座』 浅野和三郎著

 巻末の付録に著者がバリアンタイン、マアジャリイ等を実験した記事がある。

心霊と人生』 誌

 昭和七年七月号、同十月号、同十一月号、同十二月号、昭和八年五月号、同六月号、同七月号、同八月号、同十一月号等にも直接談話に関する研究又は紹介が載せてある。

『直接談話のレコード』 三枚六面一組

 龜井霊媒によりて出来たもので、間部子爵と司配霊しはいれいのモゴール並に故石亀青年との間に行われた問答で、日本に於ける最初の収穫である。



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