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〔三〕 東のぼり

(四)


 魔界まかい活躍かつやくは一にちまたにち熱度ねつどくわえてて、秋山あきやまさんの大本おおもと信仰しんこうたいして、ありとあらゆる妨害ぼうがい運動うんどうこころみた。ず一ぽう夫人ふじんのかよわき肉体にくたい使つかって、非常識ひじょうしきさわぎをえんぜしむると同時どうじに、他方たほうおいては、秋山あきやまさんの親戚しんせき友人ゆうじんとを使つかって、秋山あきやまさんに忠告ちゅうこく攻撃こうげきとをこころみさせた。かたちうえかられば、いずれも立派りっぱ親戚しんせきであり、また友人ゆうじんである。それ人々ひとびとまたしょ懸命けんめい秋山あきやまさんの利益ためおもって、苦言くげんていしたりんかする。ところ霊的れいてきしらべると、それ人々ひとびとことごと悪霊あくれい傀儡かいらいであるのだからじつおどろく。

 斯麼こんなことをくと、れい憑依ひょういということをらぬ人々ひとびとは、よい加減かげんことかくくらいおもうに相違そういない。就中なかんずく悪霊あくれい傀儡かいらいだとわるる親戚しんせきなり、友人ゆうじんなりの憤怒ふんぬ想像そうぞうあまりある。大抵たいていひとはムキになって、

失敬しっけいなことをうではない。乃公おれ誠心せいしん誠意せいい秋山あきやま利益ためおもってやってるのだ。莫迦ばかなことをいうと承知しょうちせぬ』

などと、いきまくに相違そういない。

 いかるのもほど無理むりはない。自分じぶんは十ぶんこれに同情どうじょうする。しか自分じぶんはこれ人々ひとびとが、一たびいかりをしずめて反省はんせい熟慮じゅくりょさるるを希望きぼうする。大本おおもとたいする知識ちしきなにもないくせに、秋山あきやまさんの大本おおもと信仰しんこうたいして忠告ちゅうこくをするというのが、すで出発点しゅっぱつてんおいあやまってりはせぬか、さらにその忠告ちゅうこくはたしてただしい忠告ちゅうこくか、それとも間違まちがった忠告ちゅうこくであるか、一ぺんしらべて必要ひつようがありはせぬか。

 およ無智むちほどにもおそろしいものはく、また不正ふせい批判ひはんほどあやまるものはない。ひと秋山あきやまさんの親戚しんせき友人ゆうじんかぎらず、この三四ねんらい大本おおもと批判ひはん大本おおもと攻撃こうげきをやったものは沢山たくさんあるが、何所どこに一てん半毫はんごう取柄とりえのあるものがあったか。ただしい忠告ちゅうこくは千きん価値ねうちがあるが、不正ふせい忠告ちゅうこく有害ゆうがい有毒ゆうどくである。忠告ちゅうこく仮面かめんかむった魔言まげん鬼語きごぎぬ。

 どくだから姓名せいめいあずかっていてやるが、秋山あきやまさんの大本おおもと信仰しんこうたいして、もっと強硬きょうこう忠告ちゅうこく? をこころみた友人ゆうじんの一にんは、海軍かいぐん部内ぶない有名ゆうめいぼう将官しょうかんであった。自分じぶん同席どうせきれっしてたが、しきりに莫迦ばかなことをならべて、秋山あきやまさんのわか信仰しんこうゆるがせようとつとめ、ほとんくにえなかった。海軍かいぐん士官しかんちゅうには、うすッぺらななま半熟はんじゅく無神諭むしんろん潜在せんざい意識諭いしきろんとうりまわし、自分じぶん国体こくたい破壊はかい大罪人だいざいにんであることにがつかぬものがけっしてすくなくない。日本国にほんこくからかみったときに、何所どこ日本国にほんこく日本国にほんこくたる所以ゆえんがあるとおもうか。敬神けいしんがなければ尊皇そんこうもなく、また愛国あいこくもない。日本にほん皇室こうしつ日本にほん国土こくどが、永劫えいごうむかしから天地てんち祖神そしんと、ってもれぬ因縁いんねん関係かんけいがあるということわかってこそ、はじめて日本にほん国体こくたい精華せいかわかるのだ。綾部あやべ大本おおもとというところは、前後ぜんご左右さゆう、四ほうめんから、このこと実証じっしょうしてせて、修行者しゅぎょうしゃをしてほどそうだと首肯しゅこうせしめることに、異常いじょう成績せいせきげつつあるのだ。神諭しんゆといういき証文しょうもんしてせたり、言霊ことだまかぎもてかくれたる古典こてん真意義しんいぎけてせたり、鎮魂ちんこん帰神きじん神法しんほう神霊しんれい実在じつざい体得たいとくせしめたり、各宗教かくしゅうきょう斬新ざんしん比較ひかく研究けんきゅうこころみたり、真面目まじめ人々ひとびとについでぜん努力どりょくひっさげてるではないか。

 それをのぞいてるだけのろうさえもらず、浅薄せんぱく鼻元はなもと思案しあん愚劣ぐれつなる先入主せんにゅうしゅたてに、漫然まんぜんとして時代じだいおくれの無神論むしんろんなどをまわそうとするのは、なんという片腹かたはらいた仕業しわざであろう。かみがあるかいかわからぬというのならば、それがわかるまで研究けんきゅうぐべきである。自分じぶんわからぬからかみいと主張しゅちょうするものは、到底とうてい人間にんげん風上かざかみにはけぬしろものである。

 秋山あきやまさんはかかる友人ゆうじん愚論ぐろん容易ようい観破かんぱするだけのするど頭脳ずのうと、またとうと霊的れいてき経験けいけんとをってた。

彼奴あいつアンな屁理窟へりくつならべてこまる』

 などと、その友人ゆうじんかえってからコボしてたが、衆口しゅうこうかねをとかすのことわざごとく、間断かんだんなく斯麼こんなわからずやの連中れんちゅうからてられては、多少たしょう精神上せいしんじょう混雑こんざつきたさざるをなかった。混雑こんざつさえすればそれで悪霊あくれい作戦さくせん見事みごと成功せいこうしたわけで、ひと秋山あきやまさんの場合ばあいかぎらず、現在げんざい日本にほんじん大多数だいたすうはマンマと悪霊あくれい術中じゅつちゅうおちいってるのだ。

 が、悪霊あくれい妨害ぼうがい運動うんどうがこのへんとどまってたなら、まだ自分じぶん微力びりょくでもなんとかいとめる方法ほうほうがあったろうが、その手段しゅだんはいよいよでていよいよ巧妙こうみょう陰険いんけんきわめ、到底とうていいかんともするによしなきところまですすんでった。ほかでもない、それは悪霊あくれい次第しだい次第しだい隙間すきまねらって、秋山あきやまさん自身じしん肉体にくたいったことであった。

 いかな雋敏せんびん二の才物さいぶつであるにしても、秋山あきやまさんの信仰しんこうあさく、したがって神諭しんゆかたりなかった。その結果けっか肝腎かんじんてんおいて二三の取違とりちがいをまぬがれなかったのは是非ぜひもないはなしだ。今度こんどだい神業しんぎょうにはかみ因縁いんねん身魂みたま引寄ひきよせるから、人間にんげんほう引張ひっぱりにはくなとあるのに、秋山あきやまさんはある高貴こうき人々ひとびと引張ひっぱろうとした。また肝腎かんじんことかみいまいままでにおしえぬから、矢鱈やたら神懸者かみがかり予言よげんなどをしんずるなとあるのに、秋山あきやまさんはうっかりこれしんじた。何事なにごと時節じせつであるから、人間にんげん素直すなお身魂みたまみがいて時節じせつてとあるのに、秋山あきやまさんはあせりにあせって時節じせつつくろうとした。これ大本おおもと神諭しんゆ訓戒中くんかいちう精神せいしん骨髄こつずいともいうべきてんで、これにそむくことはつまり失敗しっぱい意味いみすることになるのだが、秋山あきやまさんもとうとうりかえしのつかぬ失敗しっぱいをやってしまった。それがわかってるから東上とうじょうめいぜられ、折角せっかくそばいてりながらこれ未然みぜん防止ぼうしするだけの力量りきりょうがなかった自分じぶんにも、じつ多大ただいつみがあったとおもう。


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