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心霊小品集」
心霊小品集
本書編纂について
最近十数年間、故淺野和三郎氏の著に成るものは、主として心霊学の理論的方面に関するもので、所謂文学的作品ではない。唯その俤あるものに、『欧米心霊行脚録』あるが、是れとて単なる文学を目指したものではない。
淺野氏は心霊学の樹立に、畢生の心血を濺いだのであるから、文学的作品をものすることなどは、蓋し其の眼中に存しなかったことでもあろう。併しながら、氏の文学的価値は、之を没し去るには、余りにも惜しい。本書は些かなりとも、氏の斯うした方面に対し注意を払った積りである。
とはいえ、本書採録にかかるものは、謂はば氏の昔ながら長養せる、文学癖の余技に過ぎないもので、固とより氏の全貌を示したものとはいえぬ。
本書には小説三篇、翻訳物五篇、創作五篇、及び『綾部を去る』の一篇を収む。小説篇は名は、小説なれども、何れも心霊事実に基づいたもので、所謂架空の小説ではない。此の点読者の御留意をお願いして置く。
翻訳篇は、是れ亦心霊に関する事実譚で、数多き中から、興味深かりそうなものを撰んで採録した。
又創作篇に収むる各篇は氏の抱負、感想、信念の一端を窺うに足るべきものがあると信ずる。
最後に『綾部を去る』の一篇を収めたが、氏の半生は、綾部と切っても切れぬ因縁があり、氏が綾部を去って、十余年を経た後でも、世人は氏と綾部とを連想することを忘れない。されば氏に関心を有する人士ならんには、綾部につき、氏の詐らざる告白を聞かんことを欲するであろう。爰に之を収むる所以である。
本書刊行に当り、編纂の次第を一言すること爾り。
昭和十四年 編纂者記す
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