心霊読本

第五篇 精神統一の理論と方法

四、精神統一修行の実際上の心得

 以上で大体精神統一に対する無形の基礎的準備ができたと考えますので、これから実際に即して、修行者の心得て置かねばならぬ諸要項を講述することにします。

 第一に私は精神統一の形式につきて述べたいと思います。『形式などはそもそも末の問題で、各自勝手に決めればよい……。』――そんなことを言う人もありますが、しかしこれは少々乱暴に過ぎます。どうせるなら矢張り合理的、合法的な形式に拠ることが望ましくあります。で、私は斯界しかいの識者の間において、すでに定評のあるものを選び、これに私自身の体験をも加えて、ずこれ丈は是非厳守してほしいと思う点のみを紹介することにします。それは単独式協同式との二つに別れます。前者は主として東洋式又は日本式、後者は主として西洋式、どちらにも特長があります。ず単独式の方法から述べます。――

 一、左右の均斉を保つこと。

 これは日本流に跪坐きざする場合にも、又西洋流に椅子を用うる場合にも同様であります。若し体格的に故障があったら、成るべく前以まえもってその故障を矯正して置くがよい。

 二、屈折角度を直角に保つこと。

 日本流に膝を折りて正坐する場合には、胴体と脚部との屈折角度を九十度に保ち、又椅子の場合には、膝の屈折角度をも九十度に保つのである。この際禁物は下腹部を折ることである。

 三、四肢の連絡を保つこと。

 坐る場合には両手を合掌し、そして足の爪先つまさきを軽く重ねる。椅子の時には両脚を正しく床に付け、足を床から離さぬ注意が大切であります。

 四、瞑目、きん、そして自然の呼吸を行うこと。

 人工的に深呼吸を続行することは面白くない。その他すべて自然の姿に従うことが望ましい。

 形式上の注意は大体んな所で尽きると思います。こまかい点は直接の指導に待つ外はない。次に私は精神統一実修中の心の工夫を述べることにします。――

 一、自我意識を全然受身に置くこと。

 受身に置くということは、縦令たとえ意識があっても、その意識をして肉体に対して積極的に働かせない工夫であります。統一をやって無意識になる人はごく少数で、多くは多少の意識が奥の方に残存するを常とします。しかしこれは、ごうも統一の妨害にはならないのであります。ただここでくれぐれも肝要なのは、その意識を握りつぶすことで、その呼吸がのみこめると、ここに初めて自己以外のる者、自己の守護霊、司配霊しはいれい等が、その体躯を使用して、所謂いわゆる交霊現象を起すことになります。足が痛いと言って膝を崩し、頭が痒いと言って手で掻くなどは、これは自我意識を受身に持たない証拠であるから、絶対に慎むべきであります。

 二、自己の選定せる目標以外の雑念妄想を払いのける事。

 これは口で言うのは何でもないが、実際問題となれば至難中の至難事で、黙って坐っていると下らない雑念が通り魔の如く、心のフィルムを掠めます。これには何人も手古摺てこずり、いろいろの工夫を凝らしますが、参考のめに比較的無難なものを、少しばかり列挙して見ると、る単調な声音、例えば瀧の音、時計の刻む音等に溶け込むやう努むること、眼底に浮ぶ色彩又は幻像の変化に注意を集めること、経文又は数字等を心で念ずること、心眼にる目的物を描き出すべくつとめること、水晶琉の如き光輝性のものを凝視すること、等、等であります。が、ここでくれぐれも忘れてならぬことは、それが一の手段であって、決して目的ではないことであります。主客を顛倒てんとうしたら飛んでもない弊害を生じます。

 三、静座中の諸現象に対して、あくまで冷静なる批判的態度を執ること。

 静座中には通例何等かの現象がおこるものですが、初心者の最も警戒を要するのは実にその際で矢鱈に恐怖心に襲われたり、矢鱈に歓び過ぎたり、又大霊覚者を気取ったり、煩悶はんもん疑惑に襲われたりすることは、何よりも禁物であります。われわれはあくまで冷静に、われわれの体躯を通じて起りつつある現象の意義、性質、内容、価値等を学術的に攻究し、若しそれが自己の思案に余れば、学識経験ある指導者に質し、万が一にも遺算なきを期せねばなりませぬ。最初にこの必要なる用意を欠いために、生涯とりかえしのつかぬ誇大妄想家になったり、金箔附きの迷信家になったりするものが、世の中にどれほど多いことでしょう。

 今度は欧米人士によりて行わる協同式の精神統一法所謂いわゆる卓子実験の要領を紹介します。英国で大流行の家庭交霊会は、大体この法式で行われるのであります。――

(一) 意気投合せる人物が五人又は七人集まること。(いつも同一人物であること)

(二) その中の一人は成るべく経験ある霊媒であること。

(三) その中の一人が司会者となり、その他は成るべく男女同数のこと。

(四) 実験室としては成るべく閑静な、無装飾の狭い室をえらぶこと。

(五) 実験に臨むものは絶対に酒気を帯びず、又成るべく軽い食物を摂り、軽快な気分になって居ること。

(六) 現象のおこるまでは各自手を繋ぐか、又は両手を卓上に載せて居ること。(現象発生後は止めてよい)

(七) 各自の席は毎回同一のこと。

(八) 讃美歌の斉唱をもって開会及び閉会を行うこと。

(九) 照明はランプに蔽物をかけるか、又赤ランプのこと。

(十) 両脚を交叉せぬこと。

(十一)中途退席を禁じ、又外来者の闖入ちんにゅうを防ぐべく扉に鍵をかけること。

(十二)男女の座席は交錯こうさくすること。

(十三)現象が起れば、司会者がもっぱらその処埋に当り、もって不整理を避けること。

(十四)統一の時間は一時間内外、長くとも二時間を越えぬこと。

(十五)他界の居住者からの指図を厳守すること。(中止命令が下れば直ちに実験を中止する)

(十六)実験回数が十回に及びても、何等の現象も起らぬ時は会を中止するか、又は人の入れかえを行う。

(十七)他界の居住者に対しては常に敬意と感謝とを払い、又閉会に際しては厚くその労を謝すること。

(十八)恐怖観念又は生意気な荼目気分が何より禁物、あくまで落ついた真剣な態度を持すること。

(十九)現象に対する批判、研究等は閉会後において十二分に行うこと。(その際は人間的立場を厳守し、いたずらに有難がったり、恐れ入ったりしてはならない)

(二十)毎回詳細なる記録を作製すること。

 大体以上で要領を尽して居ると考えます。この式の統一で普通真先まっさきにおこるのは卓子の運動で脚が挙ってガタガタ音を立てます。司会者は早速その音を利用して、他界との通行を試みねばなりません。彼は他界の住人に向って、んな具合に呼びかけます。『よく御出現くださいました。これから卓子を使って、通信を願いたいと存じます。卓子の脚が一つゆかを叩けばノー、二つの時は不明、三つの時はイエスり、と決めましょう。この規定がお判りになりましたか? お判りになったら三つ床を即いてください。各自の座席はこれで宜しいか? 若し入れかえを要するなら、その人を卓子で押して下さい。それからこの人の新たに坐る位置を卓子で示して下さい。卓子の傾いた場所に坐ることにします。……他に訂正を要する件はありませぬか? 若しあるなら三つ叩いてしかりと答えてください。灯火はこれで宜しいか?……室はこれで宜しいか?……卓子はこれで宜しいか?……何人かこの中で退席を要する人は居りませぬか?……。』最初は右のような準備行動を執り、極力手落のないようにせねばなりませぬ。こちらの質問は勿論むろんイエスノーで判るようにうまく工夫すべきであります。いよいよ下準備ができたら、巧みに質問をかけて、霊媒能力者の有無、その他肝要な問題の解決にかかります。そうして居る中に霊視現象、霊言現象が起りかけたら、しめたもので、統一の興味が著しく加わります。欧米で名ある霊媒は、大体皆こんな家庭交霊会の所産であります。

 日本流の単独統一法と、西洋流の協同統一法と、どちらが優れて居るかは、時と場合、又国民性の相違等で一概に言われませんが、どちらにしても大切なる要素は、実修者の素質、態度及び用意等であります。


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