心霊読本

第五篇 精神統一の理論と方法

二、精神統一の一般的目標

 精神統一の根本のねらい所は、以上の説明でほぼお判りになったかと考えますが、まだそれ丈の用意で、統一の実修にのぞむことはできません。実際問題とすれば、精神統一とは、畢竟ひっきょうる一つの目標に向って全精神を打ち込むことで、その目標がはっきりして居れば居るほど、その効果も顕著な訳であります。いかに肉体意識が断滅したところで、又いかに自己の守護霊、司配霊しはいれいとの連絡が取れたところで、肝腎な標的がなければ、どうにも使い道がない。それは丁度刀を研ぎすまして、空しく鞘に収めて置くようなものであります。いつまで経っても切れ味は判らない。在来の諸修法中の或物あるものは、この点の考慮がはなはだしく欠けて居り、その結果社会人生に貢献する所があまりなかったように考えられます。

 さればと言って、勝手次第の目標を選んで、異常能力の濫用でもったら、それこそ大変であります。前者の弊害は多寡たかが知れていますが、後者の弊害に至りては、それが積極的である丈、それ丈往々にして国家、社会、人生の安寧幸福を危うし、自他共に取りかえしのつかぬような損害を蒙ることにもなり兼ねない。近来雨後のたけのこの如く簇出ぞくしゅつする不良性の新興宗教団体の間には、著しくこの悪傾向を帯びて居るものがあり、誠に寒心に堪えないものがあります。われわれ心霊学徒としては、断じてその轍を踏んではならないのであります。

 これを要するに、人生は自由にして同時に不自由、われわれは常に理想と現実との板挟みになって、苦心すべき運命をって居ります。精神統一の目標の選定に当りても、甚深の考慮を要する所以であります。私がこれから列挙せんとするのは、私自身の二十年来の経験から、自然に定形を為すに至ったものでありますが、しかし世界の心霊学徒の間には、大体において期せずしてこれに一致した見解が行われているように見受けられます。私はこれが本邦の識者によりて、成るべく一般に承認さるることを希望し、又これを期待するものであります。

 私はず精神修養のめの精神統一、換言すれば、万人向きの精神統一の目標に就きて述べたいと思います。第一の目標は心身の浄化であります。御承知の通り、人間には病気もあり、邪念もあり、又煩悶もあり、一たび心静かに自己を省る時に、何人も自己の姿の醜さに戦慄おののく筈であります。何とかしてもう少し清浄きれいな人間になれないものか。――心の底にこの叫びの起らない人間は、余っぽどどうかしているに相違ない。私が何は措いても、ず心身の浄化を、目標の第一に選んだ所以であります。すでに心身の浄化が目的である以上、統一修行者の心的状態は飽まで謙虚、あくまで純真、すべてを天地の神霊の前に投げ出して、その広大無辺なる智慧と愛との真光まひかりの中に包まるる気持であらねばなりませぬ。うっかり『吾は神なり』と言ったような一面の真理を鵜呑みにした結果、生息気な気分が少しでも混ったらそれこそ大変で、その瞬間に、受合って何等かの好ましからぬ不良霊の捕虜になり、心身の浄化どころか、却って正反対の結果を招くことにもなります。くれぐれも警戒を要するのは無反省の自己陶酔、誇大妄想式の増長慢であると思います。

 目標の第二としては能率の増進を挙げたいと考えます。人間本具の能力は、兎角その肉体的意識のめに抑圧されて、充分の威力を発揮し得ないうらみがあります。で、この弱点を克服すべく、古来識者によりてさまざまの工夫が講ぜられて居りますが、私はその一つに、是非とも合法的な精神統一の実修を数えたいのであります。すべて統一に限らず、何事を行うにも、暗中摸索式の出鱈目なやり方ははなはだ面白くない、まぐれ当りに所期の目的が達せらるる場合が、あるいはあるかも知れぬが、それではとてもこの多事多難な現代の用途にはならない。

 しからば私の所謂いわゆる合法的な能率増進法とは何か? 外でもない、それは各自専門の仕事を目標として統一の修行を行うことであります。すでに述べた通り、各自にはる一人の天賦的守護霊があり、従って各自にはその人特有の天分があります。人間は一能の所有者ではあっても、決して万能の所有者ではないのであります。従来の諸修法が、一向成績を挙げ得なかったのは、畢竟ひっきょうこの点の認識に欠けためで、その結果どれ丈多くの人々に、あたら貴重な光陰を浪費せしめたか知れないと思います。例えば身を軍籍に置くものが、病気治療などを統一の目標とするの類であります。あんな事で何ができるものでない。自己本来の天職的、専門的、能率の増進――これでなければ到底実績の挙る筈はない。私は日本国民――すくなくとも日本国民の中堅が、一時も早くここに目覚め、芸術家は芸術家として、軍人は軍人として、発明家は発明家として、又外交家は外交家として、精神統一の実修によりて、専門的能率を発揮するようにして貰いたいと思います。日本国運の今後の消長は、あるいはこの一事にかかると謂っても、さして過言でないかも知れない。近代において合法的な精神統一を行った結果、異常な成績を挙げた実例としては、北米合衆国の発明王エディソン、又自動車王のヘンリイ・フォード等を挙げることができます。彼等の事業が、いずれも彼等独特の統一実修の所産であることは、彼等自身で告白しているところであるから、何より確かであります。

 精神統一の一般的目標としては、以上二つで充分と思考されます。今度は精神統一の特殊的目標、換言すれば、霊媒能力養成のめの目標につきて検討を加えることに致します。


第五篇(一)

目  次

第五篇(三)


心霊図書館: 連絡先