心霊読本

第二篇 心霊現象と霊媒

一、心霊現象の種々相

 以上の記述中にも、すでに心霊現象だの、霊媒だの、という文句が随所に現われて居り、そして右に就きての説明がまだ少しも施されて居なかったので、これから大急ぎで、その埋め合わせに着手します。ず心霊現象に就きて述べましょう。

 極度に広義に言うと、われわれの身辺におこる地上一切の現象は、ことごとく一の心霊現象でないものはないのであります。所謂いわゆる物質というものは、言わば表面の形骸であり、機関であって、その内面には無形のくしびなる作用が営まれて居ることは、物質科学の方でもすでにあきらかにこれを認めて居ります。無論多くの物質学者は、つとめて心霊だの、魂だのという用語を使用することを避け、その代りに法則だの、エネルギイだのという言葉を用いるが、それはただ文字の綾に過ぎません。仮りに物質に内在する無形の或物あるものに心霊という文字を当てたところで、何の不都合はないのであります。

 が、私どもがここで心霊現象と申すのは、無論平生見慣れている普通の自然現象のことを指すのではなく、平生はめったに起らない異常現象、古代人の所謂いわゆる奇蹟又は異象と言ったようなものを指すのであります。根本的には通常現象と異常との間に、別に何等の相違がある訳でなく、いずれも天地の間におこる自然現象にほかならない。ただ異なる所は前者が月並的、普遍的であるに反して、後者が間歇かんけつ的、特殊的であるというに過ぎません。一部の旧弊きゅうへい家は今おこの狭義の心霊現象を捕えて、超科学的だの、超自然的だのと考えたがりますが、研究の結果これは大きな間違であることが判りました。一切の心霊現象は、あくまでも大自然の懐裡かいりおこる所の合理的、合法的の出来事なのであります。

 さて私の所謂いわゆる狭義きょうぎの心霊現象――これはその発生の手続の相違から、偶発的心霊現象実験的心霊現象とに二大別することができます。前者は読んで字の如く、全然不用意の間に突発する奇現象で、その種類は案外沢山であります。最も代表的なものは、幽霊屋敷、化物屋敷、神隠し、霊夢、又欧米の心霊家の所謂いわゆるポルタアガイスト(騒々しき幽霊)等で、それ等の中には学術的調査を加えて見ると、なかなか有意義なものがあり、一慨にこれ荒唐無稽こうとうむけい視することはできないのであります。現に『英国心霊研究協会』では先年『幽霊調査会』を設け、無慮三万件にのぼる報告を集めて厳査の結果、委員長のシヂウィック博士がんな報告をして居ります。いわく、『る人の死と、その幽霊との間には、何等なんらかの因果関係が存在し、これを単なる暗合にのみ帰することはできない。吾人はこれを実証されたる事実なりと認む……。』これは冷静著実なる学者の報告であるから、軽々に否定することはできない。右のほかフランスの有名な天文学者で、又心霊家であったフラマリオンなども、沢山の偶発的幽霊事件をあつめて、貴重な数巻の書物を出して居ります。で、他日機会があったら、われわれとしても、この方面に手を延ばすことになるかも知れませんが、ここではしばらくこの方面には手を触れず、もっぱら実験的心霊現象のみを取扱うことに致します。

 実験的心霊現象というのは、主として学術研究の目的をもって、る特定の実験室内において、霊媒と称する、る特殊の人間を機関として作製する所の異常現象のことであります。これは前者とことなり、一定の時と場所とを決めて着手する仕事であるから、その取扱がはなはだ容易であり、従って充分これを学術的研究の対象とすることができます。近代心霊研究が先人の夢想だもしなかった、新原野を開拓することに成功したのは主としてそのお蔭で、要するに心霊実験あっての心霊研究とってもよいのであります。

 ところで、この実験的心霊現象にも、なかなか沢山の種類がありますが、大別すれば左の二種類に分れます。

即ち――

(一) 物理的心霊現象

(二) 主観的心霊現象

であります。

 

(一)物理的心霊現象――これはる無形のものが有形の物体に働きかけて、何等かの現象を起す場合を指すので、従っての種の現象は、五感の所有者には誰にでも感識かんしきできる。詳しい解説は先へ行って、改めて試みることとし、ここではの種に属する、最も代表的な現象にきて略解を施すことにします。

 (イ)卓子其他物品の浮揚現象――卓子その他各種の物品が、手離しで空中に浮揚する現象で、一部の心霊学者の所謂いわゆる遠動現象テレカイネシスであります。これは物理的現象中最も早くから発達し、最も通俗的なものである。

 (ロ)物質化現象――所謂いわゆる幽霊現象で、死者の全身若しくは身体の一部が、生前そのままの形態をもって実験室内に出現するのであります。全物質化の幽霊は、しばしば座上の人達と会話を交え、又握手、抱擁、接吻等を行い、又中にはもとめに応じて指紋を作ったり、パラフィン手型を残したりします。あらゆる現象の中で最も劇的要素をって居る。

 (ハ)直接談話現象――死者が生前そのままの音声で、空中のる一点から話しかける現象で、その際右の音声と霊媒の発声機関とは、何等直接の関係がありません。音声が低い場合には、備附そなえつけの拡声用の喇叭ラッパを通じて発声されます。調子の良好な時は、丁度ちょうど電話口で死者と談話はなしまじえるが如き感があり、ひどく聴者を感動せしめる。

 (ニ)物品引寄現象――大小各種の物品が室外から密封せる実験室内に引寄せらるる現象であります。引寄せらるる物品は、主に小禽類、植物類、宝石類であるが、時として生きた人間が引寄せられた実例もある。

 (ホ)直接書記、直接作画現象――全然人間の手が使われず、独り手に文字が書けたり、絵が描かれたりする現象であります。石盤書記スレートライテイングというのもその一種で、二枚の石盤の間に石筆を置き、紐で固く縛って置くと、石筆が独り手にギイギイ音を立てて文字を書く。

 (ヘ)耐火現象――燃える火中に手、足、頭部等を突込み、しかもこれめにすこしの火傷やけどもしない。

 (ト)縄抜、襦袢じゅばん抜現象――霊媒が長い縄で緊縛されたままで、下に着て居る襦袢じゅばん襯衣しんいの類を抜き取ったり、又縄そのものをスポリと除去したりする現象である。

 (チ)直接吹奏現象――笛、その他の楽器類が誰も手を触れないのに、独り手に鳴り出す現象で、時に名曲を吹奏したりする。

 (リ)物体貫通現象――コップ、貨幣、その他の器物が卓子を貫通して下に落ちるの類で、後でしらべても卓子に孔はあいていない。

 (ヌ)敲音ラップその他自然発声現象――前記の直接吹奏現象とはことなり、何等なんらの器物なしに、高低大小各種の音響が独り手に空間におこる現象である。

 (ル)杖卜法――霊媒が適宜の樹枝をたずさえて歩いていると、不図ふとる地点に達すれば、右の樹枝が猛烈な振動を起します。の地点を掘ると通例水脈が発見される。

 

(二)主観的心霊現象――これは前記の物理的諸現象と異なり、すべてが霊媒の主観におこる現象であり、従って外形的には何の奇もなく怪もないが、その内容価値をしらべると、時として驚嘆に値するものがあり、近代心霊科学の精華は、むしろこの方面に集って居ると称してよいのであります。左にその代表的なものを列記します。

 (イ)霊視現象――本邦の所謂いわゆる透視、千里眼、又は天眼通で、普通の視覚とは全然独立せる別個の第六感的視覚で、主に肉眼を閉じた時に現われます。右の変形に水晶球凝視があります。これは眼をけて水晶球を凝視するので、そうすると目的物が歴々れきれきと水晶球に現われる。

 (ロ)霊聴現象――前者が視覚的に現れるのに反し、これは聴覚的にあらわれる丈の相違であります。

 (ハ)自動書記現象――霊媒が精神を統一して、受身パッシープになって鉛筆を持って居ると、自己の顕在意識とは全然別個の潜在意識が加わりて文字を書く現象であります。時とすれば、鉛筆の代りにプランセット又はウイジャ盤等の補助的器械を用うる場合もある。

 (ニ)霊言現象――本邦の所謂いわゆる天言通又は口寄せで、つまり入神した霊媒の発声機関が、別人格によりて司配しはいされる現象であります。現象としてはこれが最も平凡で、古来神懸りというものの大部分はこの形式で現れて居る。

 (ホ)思想伝達現象――所謂いわゆる読心術で、隔離されたる相手の思想を感識する現象であります。受信者と発信者とに分れている点が、非常にラジオの装置に類似して居る。

 (ヘ)精神測定現象――与えられたる一個の物品を手懸りとして、これ連関れんかんした過去の事象を感識する現象で、その際右の物品は恰度ちょうど蓄音機のレコードの如き作用を営むように見受けられる。

 今日われわれが心霊現象というのはほぼ以上で尽されて居ります。細かにいえばまだまだほかにないでもないが、それ等は皆以上列挙した現像の変形又は応用と思えば大過なきに近いでしょう。


第一篇(四)

目  次

第二篇(二)


心霊図書館: 連絡先