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第十講 自動書記現象の検討

 六 ステッド其他そのほかの自動書記

自動書記中にはしばしば生者からの通信がまじる。――霊界の法則につきての説明は矢張霊界の住人のお手の物。

 トラバース・スミス夫人の自動書記の紹介に意外に紙面をついやしてしまいました。これから他の著名なる自動書記現象につきて一言するのが順序であります。

 ダブリュー・テイ・ステッド W. T. Stead. ――この人の生前又死後に於ける真剣な活動にきては、既に他の諸現象を講述するに当りて、ちょいちょい紹介して置きましたが、自動書記霊媒としてのステッドの功績にきても是非瞥見べっけんの必要があります。彼の守護霊はジューリア・エームスと称する婦人の霊魂で、生前ステッドと親交があったのでした。一八九七年に出版せられた『死後』と題せる一巻は実にジューリアからの自動書記通信の記録で、当時の心霊学界に多大の貢献を為した名著であります。ステッドが一九〇九年私財をなげうちてロンドンに霊界通信所を設け、信用ある霊媒を備えつけて幽明所を異にせる不幸なる人達のめに、無料で交通の途を講ずるに至ったのも、実にジューリアの切なる勧告の結果でありました。三ヶ年間に同所で取扱った件数は六百にのぼり、非常な慰安を依頼者に与えたといいますが、経費の都合で今日は中止されてるようであります。

 ジューリアの霊魂ははなはだ綿密に帰幽後の感想又他界の状態を説明し、その通信は斯道しどうの研究者に好参考資料となってります。標本としてホンの一節を紹介します。――

 ……現代に於ける最悪なる災禍は拝金宗でも利己主義でもありません。魂の喪失――これであります。現代人の多くは魂の実在を忘れて居ます。肉体に属するすべてのものはただ魂の苗床としてのみ価値があります。現代人は物質の中に魂を埋めて見失っているのです。魂の喪失これが現代人の病気です。失われたる、この魂を見出すことこそ、真の救済の道であります……。魂を捜すにはただ一つの方法があります。それは現世の生命を越えて存続する事物の上に思いをささげることです。あなた方がこれを拒めば、最早もはや救われる道はありません……。

 ステッドはその自動書記中に、しばしば数百マイル又は数千マイルを隔てたる生きた友人達から的確なる通信に接しました。『死後』の中に一つの面白い実例を挙げてりますから左にそれを紹介します。

(生者からの通信)――私の知れる一婦人はんな遠方にありても、自由に私の手を使用して通信を送るが、それが彼女自身の手を使う時よりも自由であるから驚く外はない。ある時彼女はロンドンから三十マイルの距離にあるハスルミーアに週末を送り、し帰宅すれば水曜日の昼私と会食の約束ができてた。月曜の午後晩く、私は不図ふと彼女の動静をしらべて見る気になり、ペンを紙につけて、心の中で彼女がロンドンに戻ったかうかを訊いて見た。すると私の手は独り手に動いてんなことを書いた。――

『妾は飛んでもない目に逢いまして、自白するさえきまりが悪く思います。妾は午後二時二十七分の汽車でハスルミーアを発ちました。妾の乗ったのは二等車で、他に二人の婦人と一人の男子が乗り合わせました。汽車がゴーダルミングに着きますと、二人の婦人達は下車してしまい、後には右の男と妾と二人きりになりました。汽車が動き出すと、直にその男は座をちてぴったりと妾の側に座りましたので、妾はびっくりして突きのけました。しかしその男は退こうとせず、妾を接吻しにかかりました。妾は怒って格闘しました。妾は男の蝙蝠傘を掴んで打ちましたが、その柄が折れてしまいました。これではとても敵わないと心配しかけましたが、幸にも汽車が歩みをゆるめてギルドフォード停車場に近づきました。男はおどろいて、妾の手を放し、汽車がプラットフォームに入らぬ内にとび降りて逃げました。妾は随分びっくりしましたが、しかし蝙蝠傘は今でも持ってります』

 右の通信を受けると同時に私は早速秘書に手紙を持たせて彼女の所につかはした。それには彼女が飛んだ目に逢ったのをきいて気の毒に思う旨を書き、『水曜日には是非男の蝙蝠傘を持参してお出でください』と附け加えて置いた。すると彼女の返事に『何も彼も御存じなので妾は困ってります。私はこの事を誰にも言うまいと思ってたのでした。折れた蝙蝠傘はかならず持参しましょう。しかしそれはわたしの蝙蝠傘で、男のものではありません』

 彼女が水曜日に私のところへ来て自白する所によれば何から何まで寸分の相違もなく、ただ折れた蝙蝠傘が彼女のものであった丈が違っていた。うしてこの錯誤が起ったかは私にも判らない……。

 この事件が起ってからすでに十五年になるが、その間私は友人の多くから同性質の自動書記式通信を受取りつつある。あるものにありては錯誤の割合がもっと大きいが、しかし一般に通信は皆正確である。この生きてる親友からの自動書記式読心法は、私に取りては普通の電報と同じく一点疑惑を挿むの余地がなくなっている。(『死後』から抄訳)

 ういう理由で生者の思想がかく自動書記に現われるかにきては、其所そこに攻究の余地が大にあります。普通提供さるるのは潜在意識説であります。即ち発信者の潜在意識(即ち霊魂意識)が受信者の潜在意識に伝達せられ、それが自動書記となりて現われるのである――そう説明するのであります。ステッドの守護霊ジューリアもこの説を肯定し、従ってステッドも大体これに従い、肉体あるものの霊魂は、訓練次第で、肉体を有たぬ霊魂に比して敢て劣らぬ能力を発揮するものだと主張してるのであります。

 この説明で一番困るのは、顕在意識と潜在意識との衝突する点であります。前記の婦人にしてもその人の顕在意識は汽車中の暴行を秘密に附そうとしてる。しかるにその人の潜在意識はさっさとそれを素破抜いて平気でる。この際ちらに当人の本体があるのか? 潜在意識が当人の本性で顕在意識が本人の仮性なのか? それともその反対なのか?

 つらつら考うるに人間にはたしかに霊性と肉性、大我と小我と言ったような二つの異なれる者の間断なき争闘そうとうがあることは事実であります。で、前記の顕在意識と潜在意識との衝突も、ある程度まではその解釈をここに求め得ないではありませんが、しかしこの際われわれは守護霊の活動をも考慮の中に入れる必要があります。現にステッドもジューリアという一の守護霊が憑いてる。汽車で暴行をうけた婦人とても恐らくそうした守護霊が憑いてると思考すべき理由が充分にあります。して見るとかの自動書記式通信の発信と受信とは、事によったら主として双方の守護霊達の働きであるかも知れないのであります。私自身の実験の結果もこの説を肯定する場合が非常に多い。で私は敢て一切の潜在意識説を否定するものではないが、しかしそれのみでは解釈に往々無理ができることを主張するのであります。

 ステッドの自動書記の紹介はこの辺にとどめて置き、今度はデスペランス夫人の自動書記通信の中で最も優秀なものを紹介しましょう。夫人は物質化現象の名霊媒としてすでに第三講で紹介してありますが、自動書記の霊媒としてもまた決して凡庸ではなかったのであります。夫人の守護霊はハムマア・スタッフォードと称し、当時知名の心霊研究家であったバアカスという人の質問に対して、極めて詳密しょうみつな自動書記式通信を送ってります。左記は一八七六年十二月十七日、ニューカッスル・オン・タイン市で催された実験会の席上で現われたもので霊界の法則に関するすこぶる有益な説明であります。質問者はバアカス氏、答者は守護霊のスタッフォードであります。

(霊界の法則)――

問 あなた方霊界居住者もわれわれ地上の人間と同様に活きた躯をって居ますか?

答 って居ます。

問 あなた方は霊界にも、家、山、谷等が存在すると言われますが、地上の人間に山が貫通し得ないように、あなた方にも貫通し得ませんか?

答 その通り……。山も谷も景色も地上で感ずるところと少しもことなりません。異なるところはただわれわれが自分の意思の力一つで何所へでも勝手に行き得る丈で、障害物は何所までも障害物であります。

問 少しく霊界の物質を司配しはいする法則を伺いたいと存じます。地上に物理学があるように霊界にも霊界物理と言ったようなものがありますか?

答 霊界の規則を地上の人間にはっきり説明する事は非常に困難です。あなた方に取りて夢幻的の物体と考えらるるものが、われわれに取りては鈍重な実在物であり、これに反して、あなた方に鈍重なものが却ってわれわれには夢幻的であるのですから、従って霊界の規則と地上の規則とは全然表裏うらはらになってるように見える。これはうしてもあなた方が自分自身で体験するより外に恐らく会得する途はないと思います。いくら私が説明しようとしたところで、却っていたずらにあなた方を迷路に引き入れる丈でしょう。自分には判り切った事柄のようで、さて説明しようとすると、適当に意味を伝える言葉がないのでたちまち行詰ってしまうのです。

問 霊界には地上で使っているような言葉や歌などはないのですか?

答 困難な質問じゃ。われわれは視覚も、聴覚も、言語も、何も彼も奪われてはるが、しかしすべての感覚をひっくるめた、一の能力をってる。まずァそう想像して貰えばよかりそうじゃ。つまりわれわれは聴かずして聴き視ずして視語らずして語るのじゃ。敏覚と言ったらよいか、直覚と言ったらよいか……ずそんなものと想像してもらえばよかりそうです。これよりほかにもっと適切な説明の方法がありません。

問 霊界にも音楽能弁その他のものがありますか?

答 地上の音楽などはわれわれの世界において聴かるる音楽の極めて微弱なる反響に過ぎない。われわれのつすべての能力は、われわれがかつて地上でってた能力の完成品である。つまり地上の仕事はこちらへ来て初めて大成するので……。

問 霊界にも地上に存在するような書物がありますか?

答 ありますとも! いかなる微細事でも記録に漏るることがありません。われわれよりも以前に霊界に住んでた人々の歴史伝記などもすっかり揃ってります。

問 霊界の文字は?

答 まあ例証として挙ぐるならば、霊界の文字は一ばん支那の文字に似て居ると称してよい。どの徽号きごうも一つの思想を表現してる。もちろん徽号きごうそのものはうでもよいが、これを手がかりにその裏面に言い表わされた思想を汲みとるのが肝要で、読む人の感じが発達すればするほど深い意味が読めるのである。つまり同一文字を観ても、その人の能力如何によりて意味の大小深浅が発生する訳で、その辺の呼吸ははなはだ説明し難い。

問 お話によればあなた方の世界には天使が折々現われるということですが、それはんな姿をされていますか?

答 それは別にちがった姿ではない。太古において天使はしばしば人間界にも出現したのですが、だんだんこれを信ずるものが無くなったのです。われわれの住む世界においてさえもが、更に一段上の世界の存在を疑うものが次第に多くなり、それ等の不信者は天使を疑います。よし天帝御自身が出現さるるとしても、それがはたして天帝そのものであるかうかを疑うでしょう。天帝の資格を証明すべき信任状と言ったようなものは何所にもありませんからな……。

問 霊界にもそれぞれの階級又は社会的地位とか言ったものがありますか?

答 それはあります。しかしあなた方が考えるような階級的差別ではありません。霊界の階級はそのものの精神、目的、同情心のいかんによりてきめられます。これ等はその人の顔に、手に、全身に、はっきり現われてるので、人間界で富や外見でごまかしがきくような訳には行かない……。


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