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第十講 自動書記現象の検討

 一 自動書記の種類内容

西洋で一ばん多い自動書記霊媒。――迷信の跋扈ばっこを防がんとせば、心霊上の一般理解を高めるよりほかに途がない。

 私の所謂いわゆる神通現象の殿しんがりとして、今回はいよいよ自動書記現象の講述に取りかかる段取になりました。これが済むと、不充分ながらも一と通り近代心霊現象の主要部分に触れたことになる訳で、本講座も一応その辺で結末をつける運びに致しましょう。思いのほか基礎工事に手間取りましたが、後で故障の起らぬめには、くすることがけだし絶対に必要でありましょう。基礎工事ヌキの盲信盲断ほど世にも恐ろしいものはありません。従来思想界、信仰界等はそうした用意の不足のめに実に見苦みぐるしき争闘そうとうを重ねつつありました。不敏ながら私はそれ等の取るに足らぬ水掛論の大部分をきれいに一掃したいと考えます。で、皆様に今しばらくの御辛抱をお願いします。これから紹介せんとする自動書記の産物は、その量においても又その質においても恐らく近代心霊現象中の白眉で、従って成るべく丁寧にこれを講述する必要があります。

 一概に自動書記と申しても、これには一種の補助的器械を使用するのと、又使用せぬのとがあります。で、外面的に考察すると自動書記は大凡おおよそ左の三種類に分れます。――

 一 ウィジャ盤を使用する自動書記

 二 プランセットを使用する自動書記

 三 霊媒が直接自分の手で行う自動書記

 第一に挙げたウィジャ盤と申しますのは通例長さ二十四インチ、巾二十インチ許のもので、盤上にはエー、ビー、シーだの、数字だのが書きつけてあり、そしてその上に三脚の指字器を載せるのであります。霊媒が右の指字器に手をかけると、それが盤上を滑走して迅速に所要の文字を指示する装置で、ちょっと印字機タイプライターのような趣があります。手で一々文字を綴る普通の自動書記よりも遙かに速力の迅いのがその特長であります。

 第二に挙げたプランセット。――これは御承知の通り心臓ハート型の厚板に二輪を附け、一端に鉛筆を挿入する装置を施したもので、霊媒がその板に軽く手を載せれば、やがて右の鉛筆が勝手に動いて文字や絵を書きます。おプランセットと大同小異の装置は古来多くの国民間に行われてたようで、現に支那には 乩示フーチというものが行われつつあります。これは丁字形の棒を垂下し、その両端を二人で握っていると、少時にして右の棒が自動的に動いて沙盤さばんの上に文字又は絵画を描く仕掛であります。

 しかし、もっとも厳密に言ったら勿論むろん第三のが正規の自動書記というべきで、その際霊媒は普通入神状態には入りません。ただ精神を鎮めて受身になってればそれでいいのであります。すると自己の意識、すくなくとも自己の顕在意識とは全然別個の意識が加わって手を動かし、だんだん慣れて来れば暗闇の中に坐ってても、又他人と談話を交えてても、一向お構いなしに、すらすらと文字を書きつづけます。兎に角自動書記はあらゆる心霊現象の中でも、比較的一ばん軽便無雑作に行うことができるので、西洋でこの自動書記霊媒ほど沢山るのはありません。その大部分は大して優れてもいないが、時として素晴らしいのが出現するから油断はなりません。

 右述ぶる通り、外面的に観察すれば自動書記現象はすこぶる簡単極まるものでありますが、その裏面の装置は案外複雑で研究者を手古摺てこずらせるのであります。真正の自動書記が、本人の顕在意識と無関係であることは疑問の余地がありませんが、顕在意識と無関係であるからと言って、直ちにこれを憑依霊の作用に帰するなどははなはだ早計に失します。われわれは自動書記現象の裏面に左の三種類の意識のいずれかが働くものと、常に警戒することを怠ってはなりません。即ち――

 イ 本人の潜在意識。(即ち本人の霊魂意識)

 ロ 他人の意識。(暗示作用又は思想伝達作用)

 ハ 霊界居住者の意識。(即ち交霊現象)

の三つであります。ですから形式は同じく自動書記でもその内容は時として非常に性質を異にする訳で、一と山百文式にうっかりした断定を下すことの大々的禁物であるべきは言をたずして明白であります。しかるに在来は糞も味噌も一しょくたの百姓議論が所得顔ところえがおに横行し、ことに宗派臭味を帯びた迷信連にその傾向がことに強烈であるのは遺憾いかんの至りであります。例えば出口直子や中山みき子の自動書記(所謂いわゆるお筆先)のうち取るべき個所が相当沢山あることは私も認めますが、しかし同時に又相当多量の不純分子をも加味してり、当人の潜在的慾望又は他の不正なる暗示の結果と見做みなすべき個所が随所に首を出してることも明白な事実であります。われわれは心霊問題、ことに自動書記に関する一般知識の標準を高め眼識を養うことによりてのみ、その弊害からのがれることがきます。

 く考えるにつけても私は日本の学者達の態度にもはなはあきたらぬ節があります。自分の受売うけうりする学説、例えば暗示説、潜在意識説、等の証明に好都合の実例であれば後生大事に並べ立てるが、自分に都合のるい実例となれば素知らぬ顔で握りつぶすことばかり考えてります。日本国には、一方にそんな不都合な曲学阿世式学者が頭を並べてるから、他方において箸にも棒にもかからぬ迷信家の集団が巾をきかせる隙間ができる訳で、公平に観てどっちもどっちだと言わねばならぬように感じられます。鳴呼いずこを向いても商売気質の異常に発達した、一時を糊塗するに汲々たるお悧巧りこう者ばかりがウジャウジャしている日本国の将来は想いやるだに戦慄みぶるいが出ます。心霊研究者の今後において成し就げねばならぬ仕事は実に多いと謂わねばなりません。

 オッと私の筆はツイ側路にそれかけました。愚痴や憤慨はしばらく後廻あとまわしにして置いて、これから皆様と共に心静かに自動書記の内容調査に着手することにしましょう。


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