第六感と精神統一法
(六) 精神統一の目標
さて前記の準備工作が終る頃までには、修行者は是非ともその目標を確立して置かねばなりません。『統一さえ行ったらその中何とかなるだろう……。』これでは何もできる筈がない。或る一つの目標に向って全精神を打ち込むことは何事を成就するにも大切ですが、精神統一の実修に於て一層その深いのであります。
然らばどんな目標が良いか? 私は自分の多年の経験からいろいろ考えて、これならば間違いなしと思わるるものを類別的に申上げて皆様の御参考に資したいと思います。人生は自由にして同時に不自由、われわれは常に理想と現実との板挟みになって苦しまねばならぬ運命の下に置かれて居ります。統一の目標の選定に当っても常に深甚の考慮を払わねばならぬ所以であります。
私が第一に挙げたい目標は、
各自の専門的能率の増進
であります。すでにのべた通り、各自には一人の天賦的守護霊があり、それがつまり各自の魂の親であります。従って各自にはその人特有の天分があり、天職があります。前にも申した通り、人間は万能の所有者ではないが、受合って一能の所有者なのであります。この点の認識が不備であったばかりに、従来の霊的諸修法はどんなにも多くの人達を邪路に引き入れ、貴重なる光陰を空費せしめたことでしょう。例えばその天職が軍人であるのに、病気治療などを統一の目標とするの類であります。これでは先ずダメです。自己本来の天職的、専門的能率の増進――これでなければ真正の実績はとても挙りません。私は日本国民中の中堅所が一時も早くここに目覚め、芸術家は芸術家として、軍人は軍人として、発明家は発明家として、外交家は外交家として、又実業家は実業家として、精神統一の実修によりて各自の専門的能率を十分に発揮して、斯界の第一人者として大に活躍していただきたいと考えます。日本国運の消長はたしかにこの一事にかかると言ってよいのであります。
私の取扱った修行者の中にも、この目的に向って邁進した為めに素晴らしい好成績を挙げた実例は相当沢山あります。例えば某夫人は統一実修によりて一種の第六感的能力を獲た結果、一躍して閨秀作家として文名を学げました。某青年音楽家は統一の修行によって守護霊との連絡を確実にした為めにひどく舞台度胸が据はり、且つ声量も加わりました。又某青年西洋画家は、僅かに数回の統一で霊視能力が現われ、題材とすべき人物風景等がありありと心眼に映ずるようになりました。
私はこの専門的能率増進ばかりはどなたに勤めても申分のない、万人向きの目標だと信ずるものであります。
次ぎに私は幾分か霊媒式の素質ある、言わば特殊の人達に対する特殊の目標を挙げることにします。真先きに挙げたいのは、
幽明交通能力
であります。死後個性の存続がすっかり学術的に証明された今日、いつまでもとぼけた顔をして、精神的鎖国主義を振り翳して居て良い道理がどこにありましょう。私はこの際日本にも幽明交通に精進する人達が千人や万人あっても然るべきだと思います。この点に於て、現在に於て英国が世界中のトップを切って居り、毎土曜日の晩に五七人の親しき友達が集まりて、所謂家庭交霊会を催す者が三十万人位に達すると言われて居ります。無論幽明交通と言っても範囲は広いが、自分の愛する妻、自分の愛する子供、等と交通することは、相互間の情念が強烈である為めに、比較的容易であり、素人でも少し統一の修行をやれば結構出来て来るのであります。現に私の家庭も五六年前から間断なく之を試み、主として亡児からの通信を受取って居りますが、斯うなって見ると死というものは、そんなに恐ろしいものでも、又悲しいものでもありません。私は自分の体験から切に皆様にこの種の交霊をお勤めしたいと思います。近頃私の友人のある有名な詩人の奥さんも交霊能力を発揮し、数年前に帰幽せる二人の愛児達からの通信を受取るようになりましたが、その歓びと言ったら掛値なしに絶大で、家庭内に光明がまともに漲った観があります。
尚この幽明交通能力をどこまでも洗練して、われ等の優秀高邁な祖先の霊魂、又貴き神霊の世界からの示教に接するようになった時に、それがわれ等人間の生活に及ぼす深刻な影響――これは偏に皆様の御推察にお委せ致します。
次ぎに私は、この多事多難なる非常時日本の為めに、特に
察知偵察能力
を挙げたいと思います。但しこれは何人にもできる芸当ではなく、生れながら多少其切先の露はれている敏感性の人物に限って推薦すべき目標であります。日本にも従来そうした能力者の卵は沢山あったようですが、本人も又その周囲の人達も無理解であった為めにこの能力を育成培養する方策を講ぜず、あたら宝の持腐れに終らせて了った傾向があります。実に惜しい話であります。
察知偵察能力の活用範囲は無限と言ってよく、或は鉱脈の発見に、或は病源の透視に、或は敵状偵察に、或は内外政状の洞察に、いくらでも使い道があります。私の手元にはそうした能力者がポツポツ揃ってまいりましたが、勿論まだ大いに不充分です。切に邦家の為めに各位の御声援と御奮起を希望して止みません。
次ぎに挙げたいのは、
衆生済度能力
であります。これは云うまでもなく病苦災厄に悩める人達の霊的救済を目的とするので、現在の日本国がいかにその必要を認めつつあるかは爰に贅言を要しないでしょう。奉仕的精神にとめる、所謂信者型の人達は、是非この方面に精進していただきたいと思います。
この種の仕事は主として悪因縁の解除、不良霊の処理、地縛の亡霊の善導等であります。私は疾病災厄の全部が霊的障害に基くとは認めないが、しかしこれ等の少なからざる部分が、そんな所から出発している事は実験の結果之を認めない訳には行かない。就中、発狂、神経衰弱、
各種の慢性症、遺伝症等の少なからざる部分が悪霊の憑依又は感応の結果であることは医学者でも次第に之を認めつつあります。正規の薬物療法はもとより大切ですが、それが充分の効果を奏せぬ時に、純真なる信者型の霊媒が、神仏の加護を背景として適宜の修法を行うことは甚だ適切であります。これによりて往々びっくりする好成績を収めることは実験上否定できません。
次ぎに大切なる目標は、
学術的実験能力
であります。その種類は透視でも、卓子浮揚でも、自動書記でも何でもよいが、ただ飽くまで正確で、いかなる厳密なる審査条件にも堪えることが肝要で、これがこの種の霊媒の生命です。一般民衆の心にここまで浸潤した唯物的観念を根本的に覆して、正しき理解、正しき信仰に導く為めにはこの種の実験が何より大切で、私どもが多年この種の能力者の養成に全力を挙げた所以であります。お蔭で我国にも幸い二三の優秀なこの物理的霊媒ができましたが、たった二三人ではドウにも仕様がない。少くとも二三十人の確実な能力者が欲しいというのが私どもの念願であります。
最後に挙げたいのが、
真理の追窮
であります。これは無論幽明交通を主体としたものでありますが、特に人類の思想観念を正しきに導く為めに極めて必要な、人間として為し得べき最高級の仕事であります。むろん頭脳のすぐれた人物が思いをひそめて哲学的思索に耽ることは大切ですが、しかし人間の智能には限度があり、ややもすれば半面の真理に拘泥したがります。三千年来世界の思想界哲学界の辿れる跡を見れば思い半ばに過ぎましょう。そこへ行くと他界の居住者はその視野が広く、経験が豊富なので、時として驚くべきすぐれた啓示を送ってくれます。近代の心霊学界では、ステーントン・モーゼスの『霊訓』、カムミンス嬢の『永遠の大道』ステッドの『死後』等が代表的産物で、或る程度三千年来の雲霧を排して天日を仰がせてくれた感があります。古経典も結構だが、二十世紀には二十世紀の新経典が生れなければ嘘です。私が特にこの目標を掲げて識者の注意を喚起する所以であります。
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