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果たしてウイルソンか?

(十五) 次ぎの理想時代

 五月二十九日の通信は不相変あいかわらずウィルソン一流の理想主義を高唱し、又アメリカ魂の自慢をしたものです。やや偏した嫌いはあるが、一の有力な参考資料ではあります。――

人類はもと同根から出発して居るのだが世界の民族にはまだそれがよく会得えとくし得ぬようである。彼等の崇拝する神とてもただ一つなのだが、名称を異にし、又教義を異にして居るので詰らない争いを演じたがる。兎に角神の崇拝は次第次第に恐怖から遠ざかり、そして一層批判的、一層冷静沈着になりつつある。現代の青年によりて発せらるる疑問は最早容易には答えられない心の自由心の解放の結果彼等は旧時代の人士を満足せしめた信仰では最早首肯し得なくなったこれは実に良い傾向だこの中から一層真率な信仰一層健実な信仰――つまり人類を仲違いさせる代りに之を親和せしむる真信仰が生れるのだ

『現在世界の民族は正に各個人の身の上にもかならず到来する一つの時期――まり無責任なる青年時代が終りを告げ、真面目な成年時代に入りつつある、大切な時期に到来して居る。醗酵爆発の時代は殆んど終りに近づき葡萄酒は正に壜詰にされようとしている何れの邦土もモー一と息の所でじッくりと腰を据え剣を鋤に代えんとして居る現在のようなダラシのない国際関係ツマリ旅行免状パスポートだの何だのといううるさい手続きを必要とする世界的封建制度は何人だれだってそろそろ鼻について来た

『この際何よりの難問題は世界の大家族がまるで他人のようにバラバラになって居ることだ。換言すればそれが同一の発達程度に置かれて居ない事だ。世界的の広い教育を受けた民族はほとんど自由連盟の準備ができて居るが、しかし困った事には未発達の民族が沢山地上に居る。此等これらに対する唯一の希望はラジオ、飛行機その他一般の科学が偉大なる発達を遂げつつあることである。旅行などもだんだん整頓し、だんだん容易やさしくなって来た。人間というものは根が流浪人であって、自分の文化を仕負って各地に移動する。これが全体として人類の進歩を助ける。何となれば未開人というものは文化人のもたらすす所を本能的に吸収する性質をっているからである毛唐人けとうじん外夷がいい、魔法使い……最初は散々悪口あくこうをついて毛嫌いするが、しかし案外迅速に科学の不思議に慣れて来る。

くして流血の惨事なしに旧時代が過ぎ去るという事は何より結構な話である。未開人だとて、新知識に接すればずんずん発達する。発達すれば自然に人類同胞主義に共鳴する。ここおいて世界的の大政府――つまり自国民のみならず、あらゆる民族の安寧幸福を求めんとする大政治機関の実現さるる希望が天然自然に湧いて来る。

私は確信する原始的エネルギーの最大量を保有する国民が結局この大任に当るに相違ないと。自然は個人を無視し、民族のめに個人を犠牲に供する傾向がある。ところがアメリカはモ一つ上手うわてを行こうとする。アメリカは個人……すべての民族の個人的価値を尊重し、一般の幸福のめに連盟の威力を糾合きゅうごうしようとする。

『しかしこれを実現するには必然的に価値の変動、中心の移動を行わねばならぬ。精神的発達なしには到底実行不能である。若しアメリカ人にして地上生活が単なる外被である事、内在的霊魂こそ永遠の価値と生命とを有っているものである事を悟り得たなら、この仕事はおおいに促進されるであろう。現在のままではまだ駄目である……。』


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