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果たしてウイルソンか?

(十四) 理想主義の先駆者

 五月二十八日スコット女史はウィルソンの霊魂に向ってむしろ無遠慮に質問しました――『何故なぜあなたの提案した例の十四ヶ条はあんな具合に有耶無耶うやむやに葬られたのですか?。』これに対してウィルソンは別に怒りもせず、いかにもウィルソンらしい口吻こうふんもっぎのように答えたのでした。――

『世界がまだ不用意である時に、んな名案だとてこれを一般に承認させる事は到底きません。私は時代に先んじて居ました。ですからあんな革命的の案件――政治上の観念というよりもむしろ理想主義に立脚した、あんな改革案に対して充分世間の擁護を期待することはできなかった。私の後援者として努力してくださった方々に対しては私は常に感謝して居ます。が、不幸にしてソーした人達は私の趣旨を貫徹せしむるには余りに少数に過ぎた。で、私の功績としてはただ人々を考えさせた事、遠大な目標に向って前進しようとする気分を起させた丈にとどまりました。私はただ精神的理想主義の先駆者だったのです。――でも、私が開鑿かいさくした通路はすでに一条の立派な道路と化しつつあります。

『私が現在発表しつつある霊界通信――これも同様にまだ充分世間から認めらるるまでになって居ないでしょう。が、しかしすくなくとも私の親友丈はこの通信が私のものに相違ないと思ってくれるでしょう。恐らく彼等はいうでしょう。――「こりァ確にウッドロー・ウィルソンから出て居るに相違ない。考え方がたしかにあの男の考え方だ。成るほど措辞用語は英国式だが、それは霊媒が英人なのだから止むを得ない。その中に盛られている思想は純然たるアメリカ式、純然たるウィルソン式だ……。』一たんこの事実が私の親友達によりて承認され、又彼等が公然これを発表するに躊躇ちゅうちょしないとしたら、かって私を大統領に選挙したことのあるアメリカ人は恐らく私の通信を熟読翫味じゅくどくがんみして見ることになるであろう。

『私は依然たる元のウィルソン、先駆者のウィルソンであります。私は今や自身発見した真理をわが同胞に向って呼びかけつつあるのであります。私は此等これらの事柄が多くの人々の心情にピッタリ当てはまり、成るほどこれはもっともだ、と衷心から共鳴を禁じ得ないもののすくなくない事を確信します。おそかれ、早かれ、何人も現在私の居る新大陸に移住しなければならない身の上であって見れば、その前途に関して前以まえもって一応知りたく思うのは当然とわねばなりますまい。

『私が現在伝えつつある幽界の模様は、決して一部の人士には突飛とも奇矯とも感ぜられないに相違ない。むしろそれは彼等が日頃暗々裏に想像して居た所としっくり符合して居るであろう。従って彼等は私の通信を口から口へと伝える気になる。それを聴かされた人達も必ず独語ひとりごつに相違ない。――「成るほどこいつァ道理だ。すこしも変チキリンなかんがえの押売りではない。たしかに立派な常識だ……。』

『こんな率直な幽界通信は私以外の者の手からもポタリポタリと雫のように人間の世界に滴り落つるであろう。これは幽明間の適当な通路、まり良い霊媒さえあればいくらでもできる仕事なのである。どの通信も、いやしくもそれがニセ物でさえなければ主要の点においことごとく一致する。死後の世界は決して古臭ふるくさい宗教家の描いたような、あんな陰気くさい、面白くないシロモノでも何でもなく、実に生気躍如たる愉快な世界なのである。老朽固陋ろうくつころうな連中は容易にその頭脳にこびりついている僻見へきけんだの迷信だのから脱却し得ないとしても、すくなくとも新時代の青年はわれわれに共鳴してくれるに相違ない。彼等には聴く耳がある、考える頭脳あたまがある……。

『彼等はっというであろう。――「人類が物質的にも、又精神的にも次第に向上進化の途を辿るという事はいかにも合理的なことである。平生われわれの抱く疑問に満足な解答を与えるものはこれ以外には絶対に無い。地上に生れるたましいどの生命の火花にも機会を与える永世の仕組こそ神の名を冠して恥かしからぬ唯一の立派な仕組と謂うべきである……」。――コーなければ、二十世紀の人間の言葉とは言われないようです……。』


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