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果たしてウイルソンか?

(十一) 約束の土地

 五月十七、十八日のウィルソンの通信は主として、北米合衆国の一市民を目標として叫びかけたもので、いつまで君達は幼稚園式の唯物観念にふけるのだ、と意気軒昂いきけんこうたるあたりはドーしてもウィルソンらしい面影をしのばせた。――『吾輩の通信は仔細にその内容を御覧になると、それが生一本のマゼリなしである事が判る筈である。吾輩を熟知せるものが地上にただ一人でも存在する以上、これが吾輩の思想に相違ないこと、換言すればウッドロウ・ウィルソンがスコット女史を道具に使って、後に見棄てた地上の世界と通信をしているのだという事を認めるに相違ない。

『吾輩は自分を最もよく知ってる人達に向って訴えるが、諸君はきっと自分を認め、よしや何等かの先入主があっても、そんなものを打ち棄てて自分を承認する丈の雅量を発揮してくれることを信じて疑わない。ドーか吾輩の味方となり、この通信が間違なく吾輩から出て居ることを公認して、一人でも多くの人々にこの通信を読ませるように努力して戴きたい。

『何故に吾輩が友人達にこんな事を頼むのか? 他にあらず吾輩の言わんと欲する所は事極めて重大だからである。吾輩の企図する所は新天新地の創造である。われわれの生命が地上のそれと近似して居り、ただ一層霊化せる状態においていつまでも永続するものであるという事実は従来人類の為したる発見の中で最も重要なる発見である。吾輩を知れる人々、吾輩の友人であった人々は、ねがわくば協力してこの事実を広く全般的に普及せしむるようにしてください。

『一たんこの事実が承認さるれば、そはかならず為政者、立法家並に民衆の代表者達を動かし、同時に一般民衆をも動かすに相違ない。そは独り北米のみの問題でなく、実に世界万国の問題である。現在では各国民が前途に自分達を待ちつつある来世生活を知らないで居るので、する事為す事すべて釣合を失している。肉の生活が余りに大きく彼等の眼に映じ之に反して真の指導役である霊の生活は殆んど二束三文に取扱われているこれは当然アベコベになるべきである

『吾輩の境涯から観れば物質界の生活は敢て不必要というのでもないが、しかしそれほど重要ではない。それは一の手ほどき、一つの幼稚園である。その時代には玩具おもちゃも遊戯も必用物であろうが、成人おとなになればそんなものはモー振り向いて見る丈の価値はない。

『幼児達の方では満足して遊んで居るものの、しかしどの幼児達も前途に自分を待ちつつある成人時代を忘れはしない。ところが現代の人類は来世生活に対してそれと同一の見方をしようとしない。吾輩は声を限りにわが北米人士に向って――ついでに全世界の人士に向って――呼びかける。幼稚園の遊戯も面白かろう。玩具おもちゃイヂリも結構であろう。が、それ丈で決して人生の能事畢のうじおわれりという訳ではない。地上生活が終焉を告げた時に一層大なる興味と満足とがなんんじを待ちつつあるのだと……。

『北米合衆国は行々素晴らしい勢威を張ることになり、過去の時代の大帝国と言っても、それに比すれば言わば貧弱な辺陬へんすうの植民地位の観があるであろう。かく北米の将来の拡張を想望するにつけても、彼等が霊魂の生活につきて一層眼識を開くことははなはだ大切である。若しも北米人士にしてよく吾輩の忠言に耳を傾け、彼等の行動の根柢に吾輩の思想を置くことを忘れぬならば、請合ってその拡張の上に大影響を与える。地上の生活が短かいこと一層すぐれたる生活が彼岸に横たわっていることを自覚したとてそれで人生は無常であるとか果敢はかないものだとか考える理由は毛頭ないこの理解ができてこそ初めて眼前日常の仕事に熱と力と興味とが湧き一瞬間も無為にして暮してはいられないという自覚が生れるというものである

『白昼空夢を見て実際の責務を顧みようとしないノンキ者はいつの世、いかなる国土にも存在する。吾輩はそれ等の人達に用事はない。吾輩の呼びかけるのは尋常一般の常識家であるが諸君! 約束の陸地ランド オブ プロミスとは断じて物質世界の陸地ではない。それは死の彼岸にげんとして存在する約束の陸地である。従って諸君がその真相を知れば知るほどますます現世の生活に興味が加わって来る。何となればこれによりて下らない恐怖の多くは一掃せられ、又現世に志を得ないで煩悶はんもん苦慮くりょに悩む者は、久しからずして楽しい生活が前途に自分を待ちつつあることを覚えて絶大の希望が湧くからである。最後に自分は大鼓判印を押して保証する――愛情は生死の境を越して確実に存続して死の利鎌とがまも到底之を切断する威力がないと

『若しもその愛情が純真でありさえすれば、諸君は知己、親戚、朋輩等の誰とでも再会ができるのである。決してこの事実に間違わない。惜しい哉世上多くの愛情は偶然の出来事又は境遇の産物である。そんなのは当然一時的のものである。従って諸君は心からの親友、心からの侶伴を造るようにせねばならぬ。断って置くがこれは断じてあたらしき繋累を造れという意味ではない。自由と真摯とを生命とするものに繋累などは無用の長物である。』


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