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果たしてウイルソンか?

(九) 北米の前途

 五月十三日の通信は北米合衆国のめに万丈の気焔を吐かんとしたもので、其所そこにウィルソン大統領の面影らしいものが躍如としている。その意見をさながらに受け入れるか否かは問題として、頗る傾聴に値するものがあります。――

『北米合衆国に関するあなたの知識が余りに空漠であるので、あなたの心に北米の現在の地位、又その未来に於ける希望と能力等につきての明確なる観念を印象することが困難であります。

『吾輩の感知する所によれば、ドーあっても北米合衆国は将来世界の牛耳を執るべき運命にあるらしい。ローマのぎにはイギリス、そしてイギリスのぎにはアメリカ――ずそう言った順序である。古代のローマ、又近代のイギリスの偉大性は此等これら両国民がいずれも多くの民族から成立して居ることである。混血の結果此等両国民の心性は自から多方面となりあらゆる才能が彼等の間から出現する勿論むろん長年月の間にすべてが渾然として融合してしまっているから、所謂いわゆるローマ人気質かたぎ、イギリス人気質かたぎなるものができ上って居るが、しかしそれが一種の合成品であることはうたがいの余地がない。アメリカに至りては更に一層雑多な民族の混血地である。しかもアメリカの建国に従事した連中は古代のローマ人やイギリス人等に比して遥かに進歩した文化人であるから、民族の混合から生ずる利益の吸収も必然的に一層多いとわねばならぬ。北米に向ってドシドシその子孫を送り込みつつある国民は畢竟ひっきょういやが上にアメリカの偉大性を培養する役目を引き受けて居るようなものである。

『ともすれば世人は人類が不断の向上発達を遂げつつあるものなる事を忘れ、民族の混合が変化向上の原動力であることに気付かない傾向がある。これは非常なる誤謬である。一切のものは合同によりて発達する。試みに僻遠の地方に追放された罪囚の子孫を見るがよい。彼等はしばしば最上の市民となって居るではないか。自然は丁度ちょうど酵母のようなもので、沫立あわだてる捏粉こねこを原料として最上等の麺麭パンを作り上げる。

『北米は新らしい国土なので、目下まだ醗酵の最中である。が私の予想するところによれば、その混沌の裡からかならず一定の形態、一定の質量が生れ、かくて一たん落付きができると同時にその多方面の能力を活用してその組成分子の開発助長に努め教育方法の如きも現在のやり方とは根本的に打って変った新機軸を出すであろう。私は確信する――ゆくゆくアメリカが旧世界の無駄だらけの方法を根抵から革新する日の必らずあることを

『若しも北米人士にして、人間の一生が決して物質世界に限られたものでない事、地上の生活が単なる一場の短かきりの宿やどりであること、現世はただ死の関門の彼方かなたよこたわれる大々的優良世界の準備地に過ぎない事、――これ等の事柄がしっかりと腑に落ちたらその時こそ北米の天地に真正の文化の花が吹き出る時である。』


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