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果たしてウイルソンか?

(六) 昨是今非

 五月五日の通信は『先覚者の任務』と言ったようなことを述べたもので、その着眼すこぶる高邁、ウィルソンの風格がなかなかよく現われて居ると思われます。――

およそ一般民衆なるものは常にある真理に対しては一向無関心なものである。彼等はただ日常の生活問題だけに没頭しているのである。われわれはそれ等の人達にはしばらく用事はない。われわれが是非とも承認せしめねばならぬのは国家国民の大事を処理すべく一段も二段も群衆の列から抜け出でた少数者である。彼等には是非ともより広き知識、より広き眼界をたせねばならぬ。彼等はそうする事によってのみよく博大なる見地に立ちて一世を指導すべき立派な法則を制定することができる。

『民衆の大部分はただおとなしく率いられて行けばよい。彼等にはただ生きる事が大切である。独り特殊の人物のみが日常生活の些事以上に超越する。彼には余分のエネルギイがある――余分の活力がある。そのお蔭で彼は嶄然ざんぜん儕輩さいはいの上に抜けづることができる。彼は正にアーチの要石キーストーンであり、鳥群の先達である。それは天稟であって教養の結果ではない。自然の浮揚力が彼をして絶頂に立たしめるのである。そしてその地点から彼はあえぎつつ後からつづく落伍者を救うべく努め、あるいは旧来の法則をえ、あるいは新規の法則を定め、もって国利民福の増進に資するのである。一般民衆が彼の努力に協力すればするほど社会の安寧あんねい幸福は増大する訳であるから、彼としても、鋭意趣旨の徹底を期図せねばならぬ。これを要するに彼の一生は他人のめに安楽な道路を築き、もって無益の消費を省かしむべき長き長き努力の連続であるのだ。古代にありてはこの種の人物は攻城野戦の将軍であったが今日では彼は天理人道の鼓吹者である

『これにつけてもあくまで皮肉なるものは人生の指導原則である。事物の流転性によりて社会の秩序は乱れ、国家の動乱は起るのであるが、しかしその流転性のお陰を以て国家社会が化石化し、有害化するのを免れ得るのである。従って努力と格闘とは永遠に続くいかに優良なる制度組織もやがては頽廃し硬化するものでそれは畢竟新興の他の優良なるものによって格闘の末取って代られねばならない昨日は善きものも今日は必らずしも善くはないのである

『境界線の此方こなたなる幽界にありてはそうした革新の争闘が現在ほど顕著ではない。が、地上において間断なく続行されつつある争闘そうとうの機運は同様にわれわれをして不断の考慮をついやさしめる。各時代は皆一の階段である小さいかも知れぬが兎に角一の階段で前時代の上に位する。近来に及びて前進的飛躍は著しきものがある。非常に発達した人物が次第に多く幽界に入って来る。それ等の人々は帰幽後格別の修行を経ずしてすぐに前進をつづけ得る。彼等は地上生活中に獲得した知識、能力、叡智をば少しも毀損きそんすることなしにそっくりこちらの世界に持ち込んで来てくれる。生存中は疾病又は老衰のめにそれ等の能力が磨耗したかの如く見えたであろうが、それは事実ではなかった。それはただ裡面に潜伏して居たに過ぎないのであった。一たん肉の邪魔物が放擲されると同時にそれ等の能力は直ちに溌溂たる生気を回復して来る

『これによりて観るも現世の格闘は、丁度ちょうど川の流れが水の腐敗を防ぐが如く、われわれに取りてはなはだ有用であることが判るであろう。人類は格闘によりて進歩し、又帰幽後もこれによりて新たなる刺戟を受ける。彼は生れながらの活物であり、常に自己の力量、自己の見聞を極度に活用して見たくてたまらぬように出来ているのである。人間界からこちらの世界に送らるる材料が精練されて居れば居るほどその究極の結果が良好であるのはいうまでもない。

『若しこの事実がよく人間の腑に落ち、かの猶太ユダヤの伝説にある約束の土地とは、つまり未来世の予言であったということを知るならば、いかに彼等の前途に光明が輝くであろう。

『人間が学べば学ぶほど、人間が努むれば努むるほど境界線の彼岸に待っているあたらしき生活に対する彼等の準備が一層完備する訳である。』


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