二つの怪奇な心霊現象

土佐の集団的怪現象

三、いよいよ鉄血政策

 久武山城等神職達の三日間の祈祷も駄目、又定福寺の昼夜兼行で、気長くっていた修法も、結局無効と相場がついた時に、差配役の連中も、ほとほと思案に暮れました。差配役は門田佐助、藤井C治、植田十藏、野島馬三郎の四人でしたが、この際取るべき方策としては、畢竟ひっきょう左の二途の外には出でまいということに、ほぼ評議がまとまりました。第一策は、しかるべき方術者を迎えて、加持祈祷を行うことでした。古来陰陽師博士などというものは、屡々しばしば奇妙の術を施し、狐狸の類を調伏したという例証が沢山残っている。幸い五台山高善院は、この地方での有徳者で、地下役を始めとし、かの狂乱者達までも、これ欽慕きんぼして居る様子であるから、同人を指立てて祈祷を修したら、あるいは奇功を奏せぬものでもあるまい。若し狂乱者がばれて手に余る時は、地下役に申しつけて、自宅へ縛り置き、大集団とならないように工夫すればよい。……大体そう言った方針なのでした。

 第二策というのは、もっと武断的な鉄血政略なのでした。高善院を迎えて、加持祈祷もるくはないが、若しもそれでうまく行かなかったら、他藩に対しても面目がない次第。むしろ江の口牢屋の囚人全部を、しばらく山田町牢屋に移し置き、其処そこへ狂乱者どもを檻禁する方がよくはあるまいか。狂乱者の中でも、老人、小供、又婦女子の輩は、地下に預りにして置き、血気盛りの乱暴者のみを牢屋へ入るれば、それで沢山であろう。無論それをるには、おかみの御威光を示すめに足軽二十人を申受け、一同十匁玉の鉄砲を持参させることにする。そして郷廻役ともども力を併せて狂乱者を召捕り、手錠足錠をはめ、十手杖棒等にて威し、さかんに無玉の鉄砲を打放すのである。そうしたら、悪魔はきっと往生するに相違あるまい……。

 四人の差配役が、とくと会議を重ねた結果、とうとう第二の鉄血政略を採用する事に一決し、二月九日、その旨を御郡奉行所に達しでたるところ、詮議の上で、その申出通りにせよとの認許が下されました。

 変態心理患者鎮圧のめに、火縄銃を携えた二十人の足軽が堂々と出陣! いやなかなかの大芝居になったものです。


二、祈祷の失敗

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四、大乱闘


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