霊界通信の種々相

宇宙の摂理

 ―― 一九三一年七月二十八日フォルチュン劇場に於けるモリス夫人入神講演 ――


 モリス夫人の入神講演が、現在英国心霊界の驚異であることは既報の通りである。その司配霊はパワアという名称で通っている。本篇は特に本邦人士に興味甚大であると思われるから、その要旨を紹介する。

 私の今夕の演題は、宇宙の摂理としてあるが、私はこの題で、太陽系について物語るものであります。地上の人類は、近来よほど大なる進化を遂げ、高級の智能を具えるようになりましたが、しかしこの智能なるものは、畢竟ひっきょう霊能の用具たるに過ぎません。人類は進化するにつれて、次第に心の働きを尊重する傾向を有って来たとはいえ、万有の奥に実在する一つの力、神霊の存在を充分に会得するまでには、まだ達して居ない。諸君は進化の法則を云々するが、進化とは、実は神意の現われに外ならないのである。過去も、現在も、未来も、時代は変れど、内容は同一である。甲乙丙丁、役者は異なるも、その目的はひとしく神の計劃けいかくの遂行にあります。

 私は人類の遠い過去の物語を知って居る身分なので、今夕も一寸、数千年の昔に、諸君を連れ戻って見たい。昔、イスラエル民族が、埃及エジプトを脱出するに当り、これを統率したのは、あの有力な指導者モーゼでありました。彼は彼等に、精神的指導原理を与え、四十年の曠野あらのの遍歴中、よくその苦艱くかんを忍ぶことを得せしめた。モーゼはたしかに、世界の宗教史上に、特筆大書すべき大人物である。そのお蔭で、弱き人民は、辛うじて、困苦絶望の境を突破することができたのであります。モーゼはたしかに、偉大なる人格の所有者に相違ない。が、彼がそうした偉業を行り遂げ得たのは、彼自身の人格の力よりも、実は彼が他界の居住者達と交通し得る、特異の能力を具えて居たお蔭であります。この事実は、くれぐれも、充分諸君に承知して戴きたい。

 他界の居住者という中には、無論彼等民族の祖霊達も含まれるが、同時にその奥に控えて居る、より高き神霊も亦、含まれて居ることを忘れてはならない。それ等はひとり、往古に於て然りしのみならず、今日に於ても、悦んで悩める者を救済してくださいます。これが宇宙の法則であり、天帝の御趣旨であるのです。

 彼等イスラエル民族の思想は、雑駁ざっぱくでありましたが、しかし偉大なる世界の宗教の発源地は、事実上、ようやく中部並びに西部亜細亜アジアであったという事は、断言して差支えない。そしてこの偉大なる民族の間から生れたる予言者、指導者の手によって、真理の もろもろのすがたに対する知識と、理解とが、世界の各方面に伝播でんぱんしたのです。

 ところで、この真理のもろもろのすがたですが、われわれは、到底その全部に通暁つうぎょうすることはできません。何となれば、真理は智慧であり、智慧は神であり、神は無限だからであります。同様にわれわれには、神の定義を下すこともできない。神は常にわれわれの力量にあまる、ある物だからであります。有限の心で、無限の諒解はできない。ただ難有ありがたいことには、常にわれわれを助けてくださるものがある。それはかの人格的存在……霊的進化の結果、非常なる発達向上を成し遂げた、偉大なる人格的存在(神々)であります。私はしばしば最高の力が、自己に内在すると申しました。それが取りも直さず霊の力であります。が、同時にわれわれの外部にも、具体的な或物――絶えず人類を指導し、教育し、又司配する、貴い指導霊が存在することを忘れてはならない。心の弱きものは、これによりて強められ、心の暗きものは、これによりて光明を与えられるのであります。

 何と申しても、人類はまだ弱く、人生はまだ不完全である。で、宇宙の摂理を行う為めには、偉大なる力量の擁護者がる。基督キリスト教では、それ等を七天使長と呼んで居る。そしてそれ等七天使長の上に君臨するのが、キリストの大神霊である。ここにいうキリストは、二千年前地上に生れた、あの人間のキリストではない。千秋万古にわたりて、永遠不滅の大キリスト、太陽系主宰の大神霊である。これが事実上、万機を総攬そうらんさるる、宇宙の代表神であり、七天使長は、すべてその旨を受け、以下の諸天使達を使役して、太陽系の各遊星を統治する仕掛になって居る。過去の歴史を心読すればよく判りますが、人類はいついかなる時代に於ても、此等の偉大なる霊界の指導者達から、擁護されつつあったのであります。 もろもろの宗教、並にもろもろの宗教で唱える指導者達は、決して神話ではない。彼等は、あなた方が実在であると同様に、立派な実在であるのです。が、普通に人類は帰幽後こちらの世界で、意識の幾階段かを通過した後でなければ、太陽神の大指揮下に於て、此等の大天使達が、いかに驚歎すべき働きをされて居るかの実際が判りません。太陽神の偉大さは、その無尽蔵の光明と、温熱と、威力とに、遺憾なく表現されて居る。これ等は外部的物質的属性であるが、われわれはこれを手がかりとして、太陽神の内面的、精神的の偉大さを想像すべきであります。

 その偉大なるキリスト、太陽神は、その主宰の下にある、あらゆる遊星に、その威力をそそぎかけつつあります。今日人類と称するものの発生も、畢竟ひっきょうそのお蔭であります。右の人類は、昔も今も、常により高き目的を達すべく、もがきにもがいて居ますが、目的の達成と否とは、彼等の内面的神性の発達に待たねばなりません。東西各地に、いろいろの指導者、いろいろの賢哲が現われて、神の教を説きましたが、或者は愛を高唱し、或者は清浄を鼓吹し、或者は美を唱導し、又モーゼの如く、神に対する畏敬の観念を、民衆の頭脳に吹き込んだのもあれば、イエスの如く、犠牲の範を人間に垂れたのもあります。が、これ等はいずれも、宇宙の内面的摂理の一局面に過ぎません。神の摂理は円満無碍むげ、八面玲瓏れいろう、一切の定義を超越し、仰いで人類の理想の極致とすべきものであります。御承知の如く、其所そこには幾多の傍径細路があります。或る一部の人達は東に向い、又ある一部は西に赴き、まるで正反対の方面を執り、そして自分自身は、真理を掴んだつもりでりますが、しばしば後に至りて、それが破滅の淵に導いたことを発見します。これは一見、神の摂理に矛盾が存在するように見えますが、われわれの境涯から観察すれば、そうでない事がよく判ります。それは精神こころの未発達な人間が、形式に……文字に拘泥するからであります。宇宙の大精神は、文字を超越します。有限なる人間の狭き心が、これを自己の観念の鋳型にはめんとするから、行詰りを生ずるのであります。

 現時の人類の指導者中には、ようやく狭き唯物的観念の覊絆たづなから越脱しかけたものが出現しつつあることは、はなはだ慶ぶべきであります。彼等は過去の教義、過去の学説の束縛を断ち切り、より大なる心の自由、より大なる心の平和を見出さんとして、奮闘努力しつつあることは、正に人類の一大進境と称してよろしい。

 然らば現時の人類の最大目標は何か?――外でもない、それは顕幽界の大連結であります。過去数世紀にわたりて、人類の前面には、精神的大障壁がよこたわり、ほとんど全く霊界の展望を妨げて居ましたが、今や再び昔のイスラエル時代のように、それが撤廃さるべき機運に達しました。この連結、しくはこの連結の自覚こそは諸君の胸に、より大なる幸福を恵むものであります。心静かに考えて見て戴きたい。現時の人類が、この不安を通し、窮乏を通し、弱点を通じ、怨嗟えんさ、憎悪、猜忌を通して、最後に求めつつあるものは、結局顕幽の連結、生死の境の撤廃ではないか? 現実の地上の政府には、到底真の安心、真の平和を与える力量がない。それなら落付く先は、至極簡単明瞭ではないか!

 もちろん諸君は物質の世界に居住して居られる身でありますから、物質的見地から、幸福を達成すべく努力されることは、至極至当であります。が、単にそれのみでは、至高至大の幸福は、到底獲得されません。何となれば、諸君はただの物質的存在ではないのでありますから……。

 現時の人類の双肩には、そろそろ重大なる責任がかかりかけて居ります。しも不幸にして、諸君が死の彼岸に、偉大なる神霊が存在して居ることがのみ込めず、又現世の裏面に、宇宙の霊的、内面的摂理が働いて居ることが会得し得ないとすれば、それこそ大変です。諸君の生存中に、従来未だ曾て地上に類例がなかったほどの大破壊が必ず出現するものと覚悟すべきであります。その悩みたるや、実に想像の外にありましょう。その主なる理由は、現時の人類が、甚大なる智的発達を遂げて居ることであります。人類の異常なる発明的能力、その悪用は、正に戦慄に値します。ホンの一挙手一投足の労で、一瞬間に、幾百千人を亡ぼすべき鋭利なる機械が、無数に発明されて居るではないか! しもその機械が、ひたすら物慾に司配さるる、野心家の手に左右されたとしたら、その惨毒は、果してどんなものでしょう! 重大なる責任が、現在の人類の双肩にかかっていると私が述べたのは、この故であります。のみならず、今や顕幽両界の障壁が漸く撤廃に近づくと同時に太陽神主宰下の一人の大天使長はそろそろ地上の経綸を直接の指揮下に置かんとしつつありますその大人格は外でもないイスラエル話の所謂ミカエルであります霊界の居住者の一人として私はこの大人格が今正に地上人類の霊的覚醒を促すべく活動を起しつつあることを諸君に警告するものであります

 世界同胞的精神の普及――これ以外に、人類平和の鍵はどこにもない。が、無諭ただ口に世界同胞愛を呼号する丈では、何の役にも立ちません。それで人間をゴマカすことはできても、神をゴマカし、宇宙の法則をゴマカすことはできません。口に唱えたことは、これを行為の上に生かさねばなりません。ところが、現時の人類は、口で説明することはお上手になったが、まだ充分同胞愛の真義に徹しては居ぬらしい。その証拠は、移民の制限に現われ、土地の争奪に現われ、償金の強要に現われ、その他の多くの事物に現われて居る。要するに現時の人類は、まだまだ世界的封建制度の、桎梏しっこく下に呻吟しんぎんしつつあるのであります。むろん地上生活に於て、平等という事は、到底実現しない。地上にはいかなる時代にも、弱者と強者とがあり、いかなる時代にも、愚者と賢者とがあり、又いかなる時代にも、貧富を分つべき、何等かの差別があります。しかし同胞的精神の発達によりて、これ等の短所は、非常に緩和されるのであります。

 近来顕幽の連絡がつけられた結果、死後個性の存続が証明されたという事は、人類に取りて、大切な事柄ではあるが、しかしそれは、進むべき階段の第一歩に過ぎない。諸君百尺竿頭一歩をすすめ、他界の偉大なる指導者達との、協同運動を開始するまでにならねば本当でない。宇宙内部の各階段の連動装置、――これを円滑に進行させることが、神の摂理の眼目であらねばなりません。

 これを要するに、現下の最大事業は今後人類の拠りて立つべき天衣無縫の指導原理の確立であると信じます。それは一宗一派、又一地方民族の専有物でなく、普遍的共通的指針であり、同時に現在の活問題の解決に対して、実行的威力を有するものでなければならぬ。これを宗教と称するなら称してよいが、それは既成宗教のすべてと異なり、太陽神から直接司配さるる大自然教であらねばなりませぬ。既成宗教は、決してその敵ではなく、むしろその下にありて、特殊の方面、特殊の民族の指導教化を分担すべき性質のものでしょう。

 かくいう私は、この大自然教の新生を、諸君に伝うべく出馬した、一小使徒たるに過ぎません。在来のあらゆる教は、皆大キリストの神霊、太陽系主宰神の前に、首をさげればなりませぬ。何となれば、いずれの宗教も、美術も、文学も、その他の何物も、要するに唯一無二の原動力、――宇宙の代表的主宰神の、部分的表現に過ぎないのでありますから……。

 私は成るべく予言じみたことは言いたくないが、ただこれ丈の事は、諸君に告げたいと思う。他なし、従来よりもより広く、より深く、又より自由なる真信仰が、世界の人類を司配すべき時代が、久しからずして到来するという事であります。地上人類の進化のテムポは、近来非常に迅まり、在来とはすっかり異なった、精神こころかてを要求する魂の所有者が、ドシドシ出現しつつあります。この要求を遺憾なく充たすものが、ただ最も正しき意味の神霊主義、……科学と、宗教と、哲学とを打って一丸となし、理論実行二つながら兼ねそなえたる、活きたまことの道であらねばならぬことは、申すまでもないと信じます。いやしくも籍を神霊主義のまがき内部うちに置かるる方々はよく自己の重き責任を自覚しいつまでも霊界の入口に足踏みして満足することなく本源の世界に向ってできる丈奥深く溯航するようにしていただきたい……。


諸君は何を求めて爰に来れる?

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