霊界通信   新樹の通信   第二篇

.乃木さんと語る

(六)日本国民に告ぐ


 引きつづいて私は、十月十九日にも、新樹を通じて乃木さんと談話はなしを交えました。この日私は『日本国民に告ぐ』という標題を提出して、之に対する乃木さんの回答を求めました。例によりて乃木さんは、非常に謙遜で、容易に口を開こうとしませんでしたが、私から再三促がされて、やっと言葉を発せられたのでした。

答『わしはこちらの世界に引き移ってからも、非常に日本国のことは心配してります。――イヤ国の事以外には、ほとんど何も知らぬと言った方が適当かも知れません。そのお蔭か、自分には、いくらか日本国に今後起るべき事柄が、薄々判ってります。――しかし、それはまだはっきりと言うべき時期でもないし、又自分とても、通信という仕事は一向不慣れであるから、心におもっていることを、全部そちらに通じることはできないようにも思います。で、わしとして目下言うべきことがはなはだ少ないのは、致し方もない次第でありますが、ただ日本国民があまり太平の夢に慣れてはけないと丈は一言申上げて置きたいと思う。――自分としては、生前日露戦役において、旅順の包囲戦を引受け、モウああいう罪な仕事……詰まり人殺し見たいな事は、二度と再びあっては困ると、心の底から懲り抜いてります。いかに戦争の常とはいえ、沢山の兵士をくすれば、その人々の恨みは、自然こちらにめぐって来て、随分身を責められることになります。自分は実際二度と再び戦争などはしたくない。自分はその事を、始終神様にもお願いしてる次第であります。が、矢張りこれも時節というものか、ドウしても、モウ一度は免れない運命になってりますようで……。自分としては、外に何も考えることはなく、ただ一図に日本の前途を案じてるばかりでありますが、念力をこらせば、そんな事が少しは判って来ます。人間の世界の方では、どんな模様でありますナ? いくらかそんな気配けはいでもきざして来ましたかナ?――もちろん、前途に国難があると申したところで、それは決して今すぐというのではない。……毛頭あわてる必要はないのであります。又いざとなれば、自分も護国の神として、むげに引込んでばかりはりませぬ。ただ日本国民として、この際何より肝要なのは、金鉄の覚悟であると思うのであります。日本と云う国は、たびたび外国と干戈かんかを交え、ことごとくそれに勝利を占めてるので、従って負けた国から、大へんに怨まれてります。その事は幽界へ来て見てから、はなはだ痛切に判ります。戦というものも、主としてうした怨みから起って来るもので……。ういうとあなた方は、すぐその対手あいては誰であるかとか、その時期は何時いつであるかとか、又その結果はドウであるかとか、はっきりしたことをききたいと思うのでありましょうが、それはわしにもよくは判らん。幽冥の世界と、人間の世界とは、切っても切れぬ密接な関係で結ばれてるものの、おのづと其所そこに区別がある。第一、時期などというものは、あれは人間の世界のもので、こちらの世界には、夜もなければ昼もなく、今年もなければ、明年もない。あるのは、せいぜいそれぞれの事件が運ばれて行く順序位のものであります。高い神さまなら知らぬこと、自分などの境涯では、とても時期の予言などはできませぬ。同様に戦の継続期間などもよく判りませぬ。――又人間に取りて、そうした事柄は、実はドウでもよい。肝要なのは、只今申すとおり覚悟一つじゃ。何時いつ何事が起らうとも、又それがいかに困難であろうとも、飽まで神を信じ、飽まで君国の為めに尽す心でりさえすれば、それで万事は立派に解決がつきます。くれぐれもあなたから、この旨を日本国民に伝えてください。わしもこれから充分に修行を積み、決して国民の期待に背くようなことはせぬ覚悟でります。いずれ詳しい事は、適当な時期をもってお伝えします。目下はまだちょっとその時期でないので……。』

 乃木さんは私の問いに応じて、まだ少々漏らされた事もありますが、今回は一と先ずこの辺で打ち切ることに致します。(五、十一、十七)


乃木さんと語る
(五)お宮とお墓

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幽界居住者の伊勢参宮
(一)最初の参拝


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