霊界通信   新樹の通信   第二篇

乃木さんと語る

(三)新樹を中継として


 新樹の第一回の乃木さん訪問は、大体こんな簡単なものでした。もちろん私としては、他に訊ねたい事がまだ沢山ありますので、重ねて十月の九日午前十時、私は再び新樹を呼び出して、う申しつけました。――

『前回はおまえ一個の訪問であったが、今日は一つ父の代理として、乃木さんにう取次いで貰いたい。――父は前年横須賀で、海軍の教官を勤めて居った淺野というものであるが、ある年乃木さんが学習院長として、海軍機関学校の卒業式に臨まれた際に、一度お目にかかってる。その後故ありて官職を辞し、爾来じらい専ら心霊研究に志し、一意専心幽明の交通を開く事に尽瘁じんすいしてる。ついては差支なき限り、こちらの問いに応じて幽界の状況なり、又感想なりを漏らして戴きたい。無論どなたのお言葉たりとも、世間に発表するのには、時期尚早と考えられる箇所ところは、厳秘に附するだけの覚悟は、充分にってるつもりであるから、その点はドウぞお心安く思召して戴きたい……。』

『承知致しました。』

 新樹はそう答えたきり、しばらく沈黙がつづきましたが、やがて再び母の躯に戻って来て、復命したのでした。――

『早速お父さんの言葉を口伝えしました。乃木さんは大変に歓ばれまして、ういう御返答でありました。――

 それは誠に結構なお仕事で、日本においてもそういう方面の研究が、真面目に着手されたというのは、近頃にない吉報である。自分は大日本帝国については、こちらへ来ても、依然として心配してる。イヤむしろ国家の事以外には、ほとんど何事も考えて居ないというてよい。が、自分はまだ幽明間の通信という事につきては、一度も試みたことがなく、ドウいう風にして良いか、はツきり判って居ない。のみならず、目下は自分自身の修行に没頭して、それに忙がしくこちらの世界の研究も、一向まだできて居ない。その点はあらかじめお断りして置く。兎も角もできる丈の事は、御返事したい考であるから、そちらで良きように何なりと質問して貰いたい……。

『乃木さんは今日はカーキ色……やや青味のあるカーキ色の軍服を着け、質素な肱附ひじつき椅子に腰かけてられました。乃木さんのられる周囲は、暗いような所ですが、不思議なことには、乃木さんの身辺は明るいのです。軍服のひだでも、顔のしわでも、皆チャーンと判ります。少々普通とは勝手が違って居ます。』

 早速乃木さんと私との間には、新樹を介して問答が交換されることになりました。ホンの一小部分を省き、左に問答のありのままを発表いたします。


乃木さんと語る
(二)新樹の訪問

目  次

乃木さんと語る
(四)一問一答


心霊図書館: 連絡先