霊界通信   新樹の通信   第二篇

乃木さんと語る

(一)彼岸の調査


 死後に於ける霊魂の存続、並に顕幽両界の交通――それがただ一片の理論であったのでは、一向面白くも可笑しくもない話で、大の男がこれに向って、精魂を打ち込むだけの価値はほとんどないでしょう。で、私としては、一時も早くこの実際的方面の仕事を開拓したいと、年来熱誠をこめて来た訳ですが、それはようやくく近頃に至りて、平たくいうと、新樹の帰幽によりて、いささか解決の曙光が見え出しました。丁度盲目の親が、小供に手を引かれて、とぼとぼと険路を辿ると言った姿で有ります。

 新樹の帰幽が手がかりとなりて、先ず動き出したのは彼の母の守護霊であり、次に出動したのは彼自身の守護霊でありました。お蔭で私の為めには、そろそろ彼岸との交通機関が整いかけ、ドウやら暗中模索の状態から脱することができました。時を置かずに、私は早速日本の霊魂界に向って、探求調査の歩をすすめました。旧い所では、千年二千年前に帰幽した歴史中の人物との交通、新らしい所では、十年二十年前に現界を見棄てた近代人の霊魂との連絡、要するにほとんど八つ当り式に、霊界の門戸をたたき始めたのであります。無論私でさえも、かくしてたる通信全部が、全部信頼すべきものであるとは考えてりませんから、単に間接に、文書によりて、これに接するだけの機会しか与えられて居ない一般世間の方々は、恐らく半信半疑の域を脱することが容易にきますまい。ことに近頃日本の出版界では、霊界通信などと銘打てる、眉唾式の偽作が続出しつつある有様ですから……。

 が、いたずらに尻込みばかりしてたのでは、うした新事業の開拓に、目鼻がつく見込みは到底ありませんから、私としてはいかなる疑惑、いかなる嘲笑をも甘受する覚悟で、片端こぐらからこれを発表して行こうかと考えて居ます。現在の私は、幽界に於けるわが愛児の、精一ぱいの努力が、どこまで斯道しどうに貢献し得るかを、ひたすら考えるだけで、その他に思いを及ぼす余裕とてはないのであります。

 取り敢えず私がここに紹介したいと思うのは、新樹を介して、乃木大将と会見を試みた次第であります。


新樹とその守護霊

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乃木さんと語る
(二)新樹の訪問


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