ステッドの通信

二八 過去も現在も同様に映ずる世界


ステッド『何やら今日は空気が鈍重です。通信がしにくいように感じます。面白いもので、多くの太陽系はそれぞれ異りたる進化の階段に置かれ、従ってそれぞれの天体には各種各様の生命が展開してる。人類はドウも湿潤な大気の裡に生息する動物らしい。それとはまるでちがった生命が別組織の星辰中に発達しつつある。一種の瓦斯ガス状の結合が他の居住者に空気を与え、他の結合が他の星辰界の居住者に彼等の要求する大気を与える。要するに環境の相違で種々の有機体が発生し、それ等のいずれにもそれぞれ「生命の火花」が授けられている。

『生命の式様は千変万化で、とても想像に余りある。

『試みにこちらの世界の旅行と地上のそれとの相違を想像せよ。地上にありては天候の良否が第一の問題であった。われわれは適当なる衣服を必要とし、又われわれの厄介な肉体を運ぶ為めの乗物を必要とした。適当の時間には食物を要求し、夜が来れば睡眠を要求した。

『ところが、こちらの世界にありては、われわれはただどこへ行くべきかを決めればよい。即座に行きたい所へ行ける。衣服、食物、休息、乗物、天候等は何等顧慮に値しない。従ってわれわれは全注意力を当面の仕事に向け得る

『あなたに話しかける少し前に、私は北アフリカのさる廃都に行っていた。私は廃墟を通じて逆にその過去の状態を透観した。――最初に見えたのが廃れ行く都、その次ぎに見えたのが殷賑いんしんな都会、その次ぎが村落で、大きな井戸やら樹木やらが見えた。その次ぎが遊牧者の休息所で、一二の土着した家族がるばかりであった。妻子を携えてここに土着した最初の人物も見えた。私は更にその以前に遡りて、人間が来ない時、次ぎに巨獣が来ない時も見た。その頃はうねうねした水が柔軟な土地を蔽い、空気はどんよりと湿ってた。更にその昔に遡ると、冷えかけた灰の裡には一つの生物もなく、一望ただ朦朧もうろうとして居った。

『過去にあったものと現在あるものとを区別するには注意を要する。一本の知識の筋を辿る時にわれわれには過去のものも現在のものも全く同一である。どの場面もわれわれには皆現在でそっくりそのまま保存されている。われわれはそれが過去のものか、現在のものかを明言する前に、しばらく立ちどまりてちょっと考慮をめぐらして見なければならぬ。』(四月八日)


二七 神と人との進化

目  次

二九 物質の海に
実在する自我


心霊図書館: 連絡先