ステッドの通信

一五 人間はただの操人形


ステッド『私達は現在欧州に起りつつあるもろもろの運動を観望しているが、それは丁度芝居を見物する気持である。幽界こちらから見て初めて事物の真相が判る。事件の起りは常に大衆の動きであって、個人の働きではない。運動の頂点に立つ人達は全然周囲の事情によりて左右され、その他の群衆に比して格別良くもなければ又悪くもない。ただ一層目立つだけの事である。天下公共の仕事に於て全部の人間は自分以外の或る力――先天的に人類に具えつけられている或る力と考えとによりて勝手にこき使わるる操人形に過ぎない一たびこの真理が判って見ると一個人を非難することは到底できなくなる同様にわれわれは一つの政府をも批判することはできない何となればそはただ動きつつある大潮流の上に置かれたる一の浮標に過ぎないから……。

『幽界の政府とてる程度まで同じような力、同じような運動から生れたものに外ならない。幽界居住者中の最大の手腕家達――人間の世界とはちがってそれは誰にもよく判る――が秩序を編み、その他のものが、その秩序を厳守するのである。幽界の政府の仕事は、いかにして個々の能力を開発せしめ、いかにしてこれを善用せしむるかにある。換言すればそれは個々の生長発育を助長するのが主眼なので、大体に於て一の教育機関と考えてよい。各個人はその特質の向うところに従いて必要な援助を受けられる。』(三月十日)


一四 書籍ヌキの文学

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一六 幽界の政庁


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