ステッドの通信

序説


 今回心霊文庫の第六篇として『ステッドの通信』を選びましたが、これはたしかに大方の期待に添った処置と考えます。何となれば近年欧米にあらわれつつある無数の霊界通信中でも、この通信は嶄然ざんぜんとして一頭地を抜いてる観がありますから………。

 御承知の通りウイリアム・テイ・ステッドは生前から熱心なる心霊研究家であり同時に又優秀な自動書記の能力者でもありました。現にその著作には『事実の幽霊譚』『ジューリアの通信』等不朽の名篇があります。不幸にしてステッドは一九一二年四月八日、渡米の途上タイタニック号の沈没と運命を共にしましたが、帰幽後に於ける彼の活動と言ったら実に素晴らしいもので、いやしくも気のきいた霊媒が見附かりさえすれば、彼は立所に之に憑りて人間界に向って通信を試みつつあります。

 近年彼が狙いをつけたのは実にロンドンの閨秀作家ドウソン・スコット女史でした。女史の告白にもある通り、女史は近年しきりに自動書記能力の発達に苦心し、亡夫の他から首尾よく立派な通信を受取ることに成功しましたが、ある日の実験に際して、俄然としてステッドからの通信に接したのであります。通信者は斯界しかいの老大家、受信者は斯界しかいの花形役者――これでは立派な通信が出来上る筈です。前後併せて三十四章、何所にも一点のたるみ、寸毫すんごうの無駄を発見し得ません。

 私は本書が専門の心霊研究者はもとより、いやしくも思想問題、信仰問題にたずさわる、すべての方々に是非繙読はんどくして戴きたいと思います。必らずやそれ等の人達に幾多有益なる思索上の手懸りを与え、幼稚無用なる論争の大半を一掃することになるであろうと信じます。

    昭和六年三月七日

淺野和三郎識


ステッドの通信

目  次 スコット女史が自動書記能力を獲た径路

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