附録 長南年惠物語

七 大阪に於ける拘留沙汰

『それはうです』と長南さんは物語りを続けました。『大朝の記事が出てからたしか三日目位でした、私の寓居は突然多数の警官に包囲され、家宅捜索を執行されたのでした。折から私は外出中でしたが、家人の談によると、それはなかなか厳密な大捜査で、何か薬品様のものを隠してはせぬかと言って床下までもがしたそうです。――無論いくら捜索されたとて薬品などのろう筈がありませんから、警官隊は手をむなしうしてスゴスゴ引き上げたのでありますが、即夜姉を呼び出して拘留十日に処分しました。

縦令たとえ五日でも十日でも人を拘留処分に附するには、それ相当の理由がなければならぬ筈です。所が私の姉の場合にはいかなる理由があるのか更に私には判らない。姉は何処どこまでも従順で、拘留すると云えば甘んじて拘留され、監禁するといえばよろこんで監禁される性質たち婦女おんなでしたが、いやしくもその監督者の地位に立てる私としてはそうは参りません。遂に私は右の言渡しを不当として正式の裁判を仰ぎ、控訴上告にまで及んだのでした。

『私が一方においく訴訟問題に気を揉んでるにも係らず、御当人は至極暢気のんきなもので、八月下旬従者数名を引具ひきぐし、富士登山に出掛けてしまいました。そしてそのまま山上にこもり、九月、十月、十一月と幾度いくたび月が変っても下山しないのには弱りました。神霊の守護を受けてる以上、その身体からだについての心配はほとんど無いとしても、裁判の問題は本人なしには進行させる訳に参りません。正式裁判を仰ぎながら、延期又延期では、私の名誉上の問題でもありますから、屡々しばしば人を富士山に派し、いろいろ手を尽した上で、十一月の下旬に至り、ヤッとの事で姉を大阪まで連れ戻ることがき、それで私もほっと安心したような次第でした。』


六 霊水忽ち壜中に湧く

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八 法廷に於ける霊水湧出


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