心霊図書館 >> 心霊文庫第1篇

心霊研究之栞

(八) 超物理的諸現象

 以上で物理的の諸心霊現象を一と通り講述しましたから、今度はいよいよ超物理的現象の順番になりました。実を申しますと心霊現象の中心骨髄は後者に属し宇宙人生の重要問題を解くべき価値ある資料は主としてこちちの方面に求めねばならぬのですがそれが何れも特殊能力者の主観に属する事柄である丈それ丈その品質の審査識別に大骨が折れうっかりすると一ぱい喰わされる おそれがあります

 ず『霊視現象クレ ェアヴォイアンス』から紹介致します。これはつまり普通の肉眼にうつらざる物象を視る能力で本邦の所謂いわゆる透視、千里眼、天眼通などというものです。その適用の範囲は大体二方面に分れます。即ち甲は物質界の現状偵察、乙は超物質界霊界の現状偵察でありますが、不良な霊視能力者には多量の幻錯覚が混りますから油断がなりません。

 霊視能力の霊媒はいずれも全然無意識にはなりません。通例相当深き入神状態には入りますが、本人の意識は奥の方に立派に保存されて居り、そして閉ぢたる眼の底に刻まるる印象を後まで記憶して居ります。

 近代日本の心霊界は概して貧弱なるを免れませんでしたが、ただ霊視能力者だけは相当豊富に現われました。故御船千鶴子、長尾郁子等はしばらく別問題としても、現に高橋貞子女史、三田光一氏、中尾良知氏等が控えて居り、それぞれ特長を発揮して居ます。現在私の手元にも二三人居りまして、私の行いつつある実地研究に多大の便宜を与えてくれつつあります。私どもが、曲りなりにも隠微不可思議なる超現象世界の事物その他を審査し得るのは実にうした重宝な、活きた眼鏡めがねのあるお蔭であります。

 これは職業霊媒でも何でもないが、日露戦争時代に東郷大将の幕僚として雷名を馳せた故秋山真之中将(当時は中佐)なども一種の霊視能力者でした。秋山さんが明治三十八年五月二十四日の晩に、三日後に起るべき日本海々戦の実況を霊眼で目撃したことなどは実に驚くべき話で、当時戦報の劈頭に『天祐と神助とにより』と書いたこともまことに故ある哉と思われる次第であります。

 かく霊視能力なるものがたしかに存在するということは何等疑問の余地はありませんが、ただその内面装置はよく判りません。多分多くの場合においてそれは霊媒の背後に隠れ、人知れずこれを擁護するところの他力――守護霊の援助によるものでしょう。そしてその手続は恐らく振動の原理に基くものでしょう。

 今度は『霊言現象』につきて述べます。古来本邦では堅苦しくいうと天言通、ずッとくだけて口寄せなどと称して居たもので、つまり霊媒が入神状態に入り、その人格が変ると同時に、その発声機関が他の人格によりて司配しはいされる現象であります。この現象の起る場合には普通に霊媒が恍惚又は半恍惚の入神状態に陥るところから、欧米ではそうした霊媒を入神話者 Trance speaker. などと呼んでいます。

 霊言現象にはその働きに二た通りの種類があります。即ち――

 (甲) 霊媒固有の守護霊が表面に立ちて発言する場合。

 (乙) 霊媒の守護霊は裏面に退き、他の霊魂が霊媒の肉体を使って発言する場合。

 例えていうと前者は私用電話の如く、後者は共同電話のような趣があり、どちらも有用であります。ただこの際最も警戒すべきは嘘八百のイタズラ霊又は霊媒自身の潜在観念に右の電話口を占領されないことで、日本にも又外国にもそうした結果、とんでもない失策を演じたことがあります。

 さて霊言現象を表面的に観察すると、外来の霊魂があたかも一時的に霊媒の肉体を占領するかの如く考えられますが、それは多くの場合に当てはまりません。霊言現象も亦他の諸心霊現象と同じく、主として波動の伝達であるらしく見えます。即ちる霊魂が遠方からその思念を放送すると、その念波が霊媒によりて受け取られ、そして霊媒はこれを自分の言語に飜訳して発表すると言った仕掛であります。ですから動物霊が人語を語ったり、外国人が日本語を語ったりしても一向不思議ではないのです。何となれば先方から放送されるものはただ思想だけであるから……。従って霊言現象において最も因難を感ずるのは固有名詞の伝達です。それは多くの固有名詞が単なる符牒で、何等の意味――思想が含まれて居ないからであります。

 霊言現象の霊媒は世界中にどれ丈存在するか知れぬほど沢山ですが、優秀なのは不相変あいかわらず少数です。何と言っても現時代において霊言の名霊媒は英国のレナルド夫人のようで、どれ丈多くの死者がこれを媒介として確実性にとめる通信を送ったか知れません。私も一九二八年の秋に一度女史を実験しましたが、実に美事だと思いました。それというのもつまり女史の人格が高潔であり、従って女史の背後にありて百方周旋する守護霊のフィダがいかにも愛すべき性格の所有者であるからであります。下卑な人格の霊媒に到底碌な霊言現象の起る筈はありません。

 ぎに『自動書記現象』につきて一言します。自動書記にもいろいろの種類があります。即ち(一)ウィジャ盤を使用するもの、(二)プランセットを使用するもの、(三)直接霊媒の手を使用するもの、等であります。いずれの方法を執ることも随意ですが、日本式の文字を書くには最後の方法が最も適当でしょう。

 自動書記では霊媒は普通入神状態に入らず、ただ心を鎮めて受身パッシィヴになって居ればよい。するとだんだん慣れて来るにつれ、自己の顕在意識とは全然別個の意識が加わりて手を動かし、その間に霊媒は他人と談話を交えても、又は読書をして居ても差支さしつかえなき程度に上達するものであります。兎に角あらゆる心霊現象中で一番軽便なので、欧米にはこの自動書記霊媒が非常に沢山居り、時として素晴らしい傑作を出します。

 近代の自動書記の霊媒としてず挙ぐべきは英国の故スティントン・モーゼスでしょう。その産物は『スピリット、ティチングズ』その他に纏められて居ります。故ダブルュー・ティ・ステッドも自動書記霊媒として『死後』と題せる通信を発表しました。その他デスペランス夫人、トラヴァース・スミス夫人、ヴェール・オウエンウイングフィールドワアド、北米のカーラン夫人等到底枚挙に遑なしです。最近にはドウソン・スコット女史の自動書記能力が特に傑出して居り、文豪のステッド、大統領のウイルソン等からはなはだ立派な通信を受取って居ます。すでに書物になっていますから、何卒皆様が直接それ等を繙読さるる事を切望します。又ボストンの名霊媒クランドン夫人に支那人の霊魂と称するものがかかって来て、論語の文句を書いたような奇抜な現象もあります。

 自動書記の内容装置の説明も不相変あいかわらず困難です。左に仏のアラン・カルデックのこれに関する研究を紹介します。――

『霊魂は決して霊媒の頭脳からその思想を借りはせぬが、ただ自己の思想を表現するに必要なる材料を霊媒から借りることは事実である。従って霊媒の提供する材料が豊富であればあるほど通信が容易である。若し霊魂が霊媒の知らない国語を使用しようと思えば、その際利用し得るものはA、B、C等丈であるから、丁度書取でもするように一字一字綴らせねばならない。若し又霊媒が無学者である場合には、利用すべき文字さえもないのであるから、その際には児童に手習をさせるように、霊媒の手全体を使役する必要が起る。これは実に至難の業であるが、しかし不可能ではない。但しいうまでもなく、そうした通信は通例不完全で霊魂の思う壷にはまらない……。』


(七)物品引寄其他の諸現象

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(九)心霊研究の参考書


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