心霊図書館 >> 心霊文庫第1篇

心霊研究之栞

(七) 物品引寄其他そのほかの諸現象

 所謂いわゆる物理的心霊現象のいかなるものであるかは以上列記したところで一と通りお判りと考えますので、其他そのほかの諸現象は一括して簡単に申上げることにしましょう。

 ず『物品引寄現象』から片づけましょう。西洋の心霊家はこれアッポルツ現象 The Phenomenon of Apports. と呼びます。つまり大小の物体が壁、扉、その他の障害物を事ともせず、一地点から他の地点に引寄せらるる現象を指します。日本にもこれは案外普通に起る現象で、明治年間には長南年惠女のごとき世界的大霊媒がありました。現在では岡崎市の内田專亮氏などがその一人で、氏は無意識の入神状態において小粒の石を掌中に引寄せることが上手です。私も同氏を十数回実験し、数個のきれいな石を貰いました。それから例の龜井三郎氏――この人も時々物品引寄をります。昭和五年一月二十八日大阪心斎橋通りの服部時計店の講堂で実験を行った際、楽器、玩具類の活動、腕時計抜取り、赤光線下の洗面器浮揚等が起った後で最後に頗る美事な物品引寄現象が起りました。当時の私の報告記事から右に関する部分を抄出します。――

 ………当夜の実験の大眼目は首尾よく済んだ。若し状況が許せば守護霊の物質化――即ち幽霊出現現象を行ってほしいと私も思い、又列席者の希望でもあったが、敲音ラップを合図として問答の結果それは不可能という事が判った。で、私はおもむろに実験の終結を守護霊に迫った。数分間微弱なる鈴の運動等が起った後、室内は全く鎮静に帰した。そこで私はポケットの懐中電灯を取り出して点灯した。

 丁度その瞬間である。守護霊は昏睡中の龜井氏の口を使って、例の皺枯れた、とぎれとぎれの声で『洗面器……洗面器の中……』と言った。私はすぐに眼を卓上の洗面器に移すと、意外にもいつの間にやら一株の 万年青 おもとが鉢のまま洗面器の水の中に引寄せられてあった。つまり何等の予告なしで、物品引寄が行われたのであった。先刻赤光線下で洗面器が上昇してから最後の点灯までの時間は約二十分間で、右の引寄はこの間に行われたものであった。これには私をはじめ列席者一同アツと感歎の声を放たざるを得なかった……。(「心霊と人生」第七巻三月号)

 因みに当夜実験室の入口の扉には固く錠をしてありました。又引寄せられた万年青の鉢植は今でも保存されて居ますが、鉢の高さは二寸五分、直径四寸三分、万年青の葉数六枚、葉の長さ七寸五分、総重量二百三十二匁でした。

 欧米方面にも物品引寄現象は相当豊富で、就中北米にはスピリットから宝石や古貨幣などを引寄せてもらったなどと言う人が相当沢山居ります。過去において物品引寄の霊媒として有名であったのはベーレーデスペランス夫人、ガッピィ夫人、マッグス夫人等をはじめ、その他沢山あります。現在ではワルソーの クルスキィ、イタリイのスコット侯爵、及びオーストリアのシルベルト夫人等が特に傑出して居るようです。

 物品引寄現象としてはいささか番狂わせですが、そうした現象の中で最も驚嘆に値するのは人体引寄現象であります。この現象は前年ガッピィ夫人に起り、近くは クルスキィ及びスコット侯爵に起りました。就中最も新らしいのはスコット侯爵の場合で、それは一昨年(一九二八年)七月二十九日の晩の出来事でした。当夜の実験は直接談話現象を行うのが眼目で、霊媒のスコット候爵を中心に、ロツシ夫妻、パッシニイ教授、ポザノ教授その他約十名ばかりの熱心な研究家達が集合したのでしたが、実験開始後間もなく、突如としてスコット侯爵の姿が室内から消失したのでした。無論実験室のいずれの扉にも錠が下りて居りました。侯爵夫人はもとより列席者の心痛驚愕は言語に絶し、百方手分けをして各室はもとより、広き邸内の隅々隈々までしらべたがドウしても侯爵の影も形も見当らない。斯くすると二時間半、一同がっかりして策の施すすべを知らなかったが、最後に自動書記霊媒能力者であるハック夫人が座に就いて守護霊から通信を受くるに及んで、初めてその所在が突きとめられました。スコット侯爵は実験室から約六十メートルを隔てたる穀倉裡の枯草の中で熟睡して居たのでした。侯爵が無事に実験室に連れ戻されたのは正に午前三時、その姿の消えたのが午後十一時半だったといいますから、まるまる三時間半雲がくれして居た訳です。

『固形体の物品又は人体がドウして扉や壁を通過して他へ移動する筈があるか?』――それは何人も疑惑を挿む点でありましょうが、物質を構成する分子の急激なる崩壊並に凝集ということを仮定すればさして不可思議でも何でもありません。もちろん現在の科学は人間の肉体を勝手に気化したり、固形化したりするまで進歩して居りませんが、心霊実験の結果によれば、他界の居住者――守護霊達――にはそれ位の事がきるものと推定せざるを得ないのであります。ただの一度もうした実験に臨みもせずにあたまから否定するがごときは許し難き学界の罪人とわねばなりません。

『物品引寄』の記事はこの辺で切り上げ、ぎに『直接書記ダイレクト、ライティング』又は『石盤書記スレエト、ライティング』『直接作画ダイレクト、ドロウィング』等につきてごく簡単に一言して置きましょう。

『直接書記』又は『石盤書記』というのは霊媒の手を使わず、守護霊達が直接文字を書く現象であります。卓上に紙と鉛筆を備えて室を暗くして置けば、縦令たとえ霊媒の躯を緊縛して置いても、文字が書けたり、又木框の附いた石盤を二枚重ねて縛って置き、霊媒がチョークを手に持ちて一二間の距離から書く真似をすればその内面に文字が現われたり、その他にもまだやり方はいろいろあります。欧米でうした現象の作出に堪能な霊媒は非常に多数で枚挙にいとまなしです。日本では例の龜井三郎氏が見事にこれをやります。

『直接作画』というのも要するに前者と同工異曲で、霊媒の手を使わずにケンバス上に立派な絵画が現われるのです。近代では北米のバングス姉妹が有名でありますが、余り普通に起る現象でもないのですから、しばらくこれにつきての詳述を差控えます。そう言った現象の内面装置はまだすっかり突きとめられませんが、大体心霊写真及び物品引寄等の換骨脱胎と考えられます。


(六)直接談話現象

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(八)超物理的諸現象


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